頚椎 症 性 神経 根 症 脊髄 症 と は。 頚椎症 頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症

第5回 頚椎症性神経根症/頚椎症性脊髄症|脊椎手術.com

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今回は『 頚椎症性 《 けいついしょうせい 》 神経根症 《 しんけいこんしょう 》/ 頚椎症性 《 けいついしょうせい 》 脊髄症 《 せきずいしょう 》』について、神戸市にある 副院長の 鷲見正敏 《 すみまさとし 》先生にお話をうかがいました。 この病院は、「脊椎外科」、「手の外科」の専門病院として発展し、脊椎手術においては、年間308件(頚椎125件、腰椎158件、胸椎25件)の実績(いずれも2008年度)を持つ全国でも有数の病院です。 頚椎症 《 けいついしょう 》とは 頚椎は年齢とともに変化します。 椎間板が弾力を失ってクッションとしての役割が果たせなくなり、椎骨と椎骨がこすれ合って変形したり、骨の並び方が変わったりします。 このように、「頚椎に年齢的な変化が起こること」を頚椎症、正確には 変形性頚椎症 《 へんけいせいけいついしょう 》と言います。 これは誰にでも起こることであって、このこと自体は病気ではありません。 この変形性頚椎症が起こったために、脊髄や神経根が圧迫されて、そのための痛みやしびれや麻痺が出てくる場合を、頚椎症性脊髄症あるいは頚椎症性神経根症という名で呼びます。 これは病気の状態です。 例えば、頚椎の年齢的な変化が中年以降急激に起こってきたり、その変化が強かったり、あるいは、頚椎の中を通る脊髄や神経根の通り道が生まれつき狭 かったりすることがあります。 症状 頚椎の中には、 脊髄 《 せきずい 》という神経と 神経根 《 しんけいこん 》という神経が通っています。 頭蓋骨の中にある脳から脊髄が下りてきて頚椎の中に入り、神経根を介して手に神経が出て行きます。 あるいは、脊髄は頚椎を通ってそのまま足の方へ下りて行きます。 頚椎症性神経根症では、脊髄から外へ出てきた神経根という神経が圧迫されるために、手のしびれ、手の痛み、 頚 《 くび 》から肩、腕、指先にかけてのしびれや痛み、そして、手の指が動かしにくいなどといった、上肢や手指の麻痺の症状が出てきます。 足に行く神経、つまり脊髄は圧迫されないので、上肢(腕)の症状だけが出てきます。 一方、頚椎症性脊髄症では、足へ行く神経も圧迫されるので、圧迫されている部分より下の手と足の症状が出てきます。 手に行く神経が圧迫されると、手がしびれたり、あるいは手の指が動かしにくかったり、 肘 《 ひじ 》や肩が動かしにくくなったりという症状が出ます。 足の場合には、足のしびれはもちろん、歩きにくくなったり、階段の昇り降りが不安定になったりという症状が出てきます。 ひどい状態になると、と言って、尿や便が出にくくなったり、あるいはもれ出てしまったりという症状も出てくることがあります。 脊髄と神経根の違い 治療には大きく分けて保存的治療と手術がありますが、頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症とを分けて話をしなければなりません。 なぜこの二つを分けて考えなければならないかと言うと、脊髄と神経根では神経の種類がまったく違うからです。 脊髄というのは神経の塊です。 脳と同じで、そこには神経の複雑なネットワークがあります。 ですから、脊髄が圧迫されると非常に重要な機能が失われる可 能性があります。 神経根というのは、その複雑な脊髄から出て行った1本の神経にすぎず、また、脊髄に比べて丈夫にできています。 このことを患者さんに説明する時に、パソコンを例にとって話をしています。 パソコン本体のコンピューターを脊髄、そこから出ている1本の電気コードを 神経根に例えます。 脊髄、つまりコンピューターは非常に複雑な機能を持っていますが、神経根というのはそこから出ている電気コードで、それは少し踏んだく らいでは、そう簡単に潰れたり切れません。 切れてもつなげば元に戻ります。 ですので、それほど大きな問題にはなりません。 しかし、コンピューターは踏んだり蹴飛ばしたりしたら潰れてしまいます。 一度潰れてしまったコンピューターは、お店で修理してもなかなか直りません し、直ってもスッキリしないことが多いのです。 このように、頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症は予後や将来の状態がまったく異なります。 頚椎症性神経根症の治療 神経根症はとても症状が強い場合があります。 腕が痛み、しびれて、とても不快な症状が出ます。 最初の症状は重いのですが、安静を保つことや薬を使うことで、症状が楽になります。 これを保存的治療といいます。 手術まで考えることはあまり多くありません。 例えば、この施設では、頚椎手術を年間120件くらいしていますが、そのうち頚椎症性神経根症で手術をす る人は年に1人か2人です。 保存的治療で良くなることが多いので、手術の必要のないことが多いのです。 痛みが強い時はステロイドホルモンの内服をします。 そしてもう一つは、私たちが使っている『神戸枕』の使用です。 この枕は、頚を前に曲げる姿勢(前 屈)をとらせるような形をしています。 頚を後ろに曲げる(後屈)と症状がひどくなるため、枕を使って頚を前屈させます。 これである程度の効果はあり、痛み に関しては90%消失します。 ただし、しびれは残ります。 外来で診察の合間に、この枕を使って横になってもらい、楽になった人はそれを持ち帰って家で安静 にしてもらっています。 『 神戸枕 《 こうべまくら 》』とステロイドホルモンの内服で良くならない場合は神経根ブロックをします。 頚椎症性神経根症で手術の適応となるのは、保存的な治療法をしてもなかなか症状が良くならない人と、圧迫によって上肢のしびれや痛みだけでなく、麻痺 が出てきている人です。 このような場合は手術をすることもありますが、割合としてはかなり少ないです。 実は私も頚椎症性神経根症を経験したことがあります。 それは非常に痛くて不快なものです。 長期間にわたって不快な思いをしたり、仕事に支障をきたした り、わずらわしい思いをすることも多くて精神的にも参ってしまいます。 姿勢によって苦痛を感じる時もあれば楽な時もあり、また、通常の痛み止めを飲んでも 効かないので、初めは精神的なものではないかと思うこともありました。 このように自分が患者となったことも、枕の開発の一因となっています。 頚の姿勢と神戸枕 保存療法で患者さんが気をつけることの基本は姿勢です。 脊髄症や神経根症を起している人は、病気の状態によって違いはありますが、多くは 前屈 《 ぜんくつ 》(頚を前に曲げる)をすると神経がゆるむ傾向にあります。 後屈 《 こうくつ 》(頚を後ろにそらす)をすると神経が圧迫される状態になります。 ですから、後屈をとらないような姿勢がいいと思います。 具体的には、布団を干すとき、押入れのものを取ったりする動作は辛いと思います。 また、コンピューターを使うときは、椅子を高くしたり、モニター画面 を向こう側に倒して、覗き込むような姿勢をとるようにすると良いでしょう。 車の運転は、ワゴン車などシートの高い車の方が楽にできます。 『神戸枕』は右の写真のように前屈の姿勢をとらせるような枕です。 特に神経根症の人によく効きます。 ちなみに手術後の患者さんには、神戸枕は使いません。 かえって姿勢が悪くなるからです。 また、肩こりだけの人にも良くない場合があります。 頚椎症性脊髄症の治療 脊髄症も同じように枕を使っています。 以前は、入院して頚椎の 持続牽引法 《 じぞくけんいんほう 》をおこなっていました。 効果はありますが入院しなければならず、また、持続牽引法といってもずっと牽引しているわけではありませんでした。 第一の目的は、頚椎の安静を保つことでしたので、今は多くの場合、『神戸枕』を勧めていることが多くなっています。 頚椎症性脊髄症の場合は、コンピューターが潰れそうになっているわけですから、脊髄の圧迫による症状が出てきた場合は、手術をしてそれをゆるめてあげた方が良いというのが基本的な考え方です。 ただし、その患者さんが「どのくらい不快に思っているか」や「どのくらい日常生活が不自由になっているか」ということは無視できないと思います。 です から、脊髄症があっても患者さんがそれほど強い症状を持っていない場合には、手術を強くは勧めていません。 基準にしているのは、日本整形外科学会頚部脊椎 症性脊髄症治療成績判定基準です。 右の表1のような評価項目があり、正常は17点満点となります。 13点以上の人は、それほど日常生活に不自由を感じていないことが多いです。 「ちょっとおかしい」、「手がしびれる」、あるいは「足がちょっと動かしにくい」ということで、医者に診てもらったら「脊髄症ですよ」と診断されるような状態です。 これが13点未満になると、明らかに日常生活に不自由を感じてきます。 「階段を下りるときに絶対に手すりが必要」とか、「お箸が使いにくくなってき た」とか、普通の日常生活が送れなくなった人は、だいたい13点を切った人です。 このように明らかに不自由を感じている場合は、「手術をしましょう」とい う話をしています。 箸又はスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない。 スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない。 不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる。 箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない。 歩行できない。 平地でも杖又は支持を必要とする。 平地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する。 平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない。 正常 手術の適応を見極めることが重要 先の評価で13点以上の比較的軽症の脊髄症の患者さんの場合、患者さんが積極的に手術を希望されないことも多く、手術をせずに経過を観察していること が比較的多くあります。 このように、手術をしなくても生活できている人が多いため、軽症の脊髄症の患者さんでしかもMRIでの脊髄圧迫がさほど強くない方に対しては、手術を強く勧めていないことが多いです。 症状がそんなに強くなくても、あまり日常生活に困っていなくても、脊髄の圧迫の程度が強い患者さんの場合は、手術をした方が良いのかもしれません。 逆 に、しびれなどの自覚症状が強くても、日常生活ではきちんと動けていて、脊髄の圧迫がそんなに強くなければ、様子を見てもよいのではないかと、今の段階で は考えています。 ただし、一人一人の患者さんについては、色々な条件を考えなければならないと思います。 例えば、30代40代の若い人で脊髄症の症状が出てきて、日常 生活はそんなに困ってないがものすごく不安であると言う人は、私は手術をしても良いと考えます。 一方、高齢で心臓病や糖尿病などの持病があって手術後に問 題が起こる可能性がある人や、家からあまり出ない人などは、患者さんの背景や年齢など色々な要素から判断しなければならいので、脊髄症であっても手術をす べきかどうかは一概には言えません。 よくお医者さんで「寝たきりになりますよ」と言われることがあります。 ちょっと手のしびれが出たので、お医者さんに行ってMRIを撮ったら、「脊髄が 圧迫されているので、寝たきりになる可能性がありますからすぐに手術しましょう」ということがよくあります。 しかし、軽症の脊髄症の方がすぐに寝たきりになることは少ないと考えています。 変形性頚椎症とは少し異なりますが、頚椎のでは転倒などのけがで寝たきりになると言われますが、ある先生の調査ではそうなる確率はおよそ14%と、意外に寝たきりになる人は多くないという結果が出ています。 手術の実際 MRIで脊髄の圧迫が1箇所か2箇所までの場合は、頚の前側からを しています。 前方除圧固定術は、比較的症状の改善が早く、ぱっと良くなることが多いのですが、固定された部分の下あるいは上の部分に負担がかかり、術後し ばらく経過した後に症状が悪くなることがあります。 ですからあまり広い範囲(3箇所以上)で脊髄に圧迫がある場合や生まれつき脊柱管(神経の通り道)が狭 い場合は、前方からはあまりしないようにしています。 また、固定しようとしている部分の上下で、もともと頚椎が不安定な場合は、そこまで固定する範囲を広 げるか、それを含めて3箇所以上になった場合は、前方ではなく後方から手術をしています。 実際には前方の固定術はあまり多くなく、後方(頚の後ろ側)からの)を主にしています。 昔はの椎弓形成術をしていましたが、一時的に上肢が上がらなくなるなどの麻痺が出ることがあるため、その発生頻度がより少ない縦割式に変更しました。 また、できるだけ頚の後ろの筋肉を温存するよう工夫しています。 術後のカラー(装具)もしていません。 カラーをすると筋肉が弱くなり、また、カラーに頼ってしまい、どちらかというと前にお辞儀をしたように姿勢が悪くなります。 術後3日目から起きて、術後2週間で抜糸です。 感染などの問題がなければ、抜糸とともに退院することも可能ですが、患者さんの不安を考慮して、術後3週間で退院としています。 脊椎専門医を受診することが大切 頚椎症性脊髄症を起しても、症状がそれほど強くない場合は、すぐに状態が悪くなって寝たきりになってしまうことはまずありません。 ですので、あわてずに脊椎専門医のいる病院を受診することをお勧めします。 このように、悪くなる場合は、割りと早くに悪くなりますので、初診から1~2年の間は定 期的に受診して、経過を診てもらうほうが良いと思います。 神戸枕に関するお問合せ先: 宮野医療器(株)ミヤノ健康ショップ 「モイヤン」神戸店 〒650-0017 神戸市中央区楠町5丁目4-8 TEL: 078 371-2146 FAX: 078 371-2931.

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頚椎症性神経根症の闘病記

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2014. 掲載 目次 1. はじめに 昨年(2013年)のに書いたが、老化は確実に進行している。 視力の低下には、聴力の低下には補聴器を装着、記憶力低下には、のほか、いろいろ工夫をしている。 2ヶ月前から、右腕がしびれて痛むようになった。 肩も首も凝り、だる痛い。 オマケの人生を7年もいただいているのだから、文句の言える筋合いではないのだが、苦痛である。 9年前に現役を退いたが、医師の資格は持っている。 この苦痛の原因と対策を自分なりに調べ、考え、実行してきた。 それをまとめて、このサイトに記録として残して置くことにした。 それは少しずつ進行し、腕の痛み、肩や首の痛みや凝りが加わってきた。 それまでは首を後屈するような動作をする機会がなかったので気付かなかったのだろう。 症状は日によって変動するが、一番激しいときには、右腕にしびれと耐えられないほどの電撃痛が走る(図1)。 また、たえず、肩や首がダル痛く、凝った感じが持続する(図2)。 図1.しびれと耐えられないほどの電撃痛が走る 図2.肩や首がダル痛く、凝った感じが持続する この症状は、首を後屈すると現れ、後屈の角度を増すと増強する(図3)。 腕のしびれや痛みの出る側(右)に傾けると、後屈の場合ほどではないが、腕のしびれや痛みが現れ、角度を増すと症状は増強する(図4)。 他人の手でこれが行われた場合、それぞれ「ジャクソン検査」「スパークリング検査」と呼ばれる。 図3.ジャクソン検査より) 図4.スパークリング検査より) 3. どのような病気だろうか? 医者が病気を診断する場合、その病気に特徴的な症状やデータに的を絞って、いくつかの考えられる病気をリストアップして、その中から不適当なものを除外していくという診断方法をとる。 これを鑑別診断 differential diagnosis と呼ぶ。 「病気に特徴的な」ということを、疾病特徴的 pathognomonic と呼ぶが、これはである。 今回の私の病気を診断するにあたって、疾病特徴的症状として「首を後屈すると片側の腕にしびれと痛みが生じる」をとりあげた。 この症状のある病気として知られているのは「頚椎症性神経根症」と「頚椎椎間板ヘルニア」である。 「頚椎椎間板ヘルニア」は40〜50歳代に好発し、それ以上の年代になると、髄核が飛び出る圧力も低下するため、椎間板ヘルニアは少なくなり、それに代わって、椎間板がつぶれて椎骨が骨棘などに変形する「頚椎症」が多くなる。 78歳という私の年齢から「頚椎椎間板ヘルニア」が除外された。 星地 亜都司 自治医大整形外科准教授が執筆したによれば、「単純X線写真で骨棘形成の所見がみられることは、無症状の場合にもよくある。 MRIでも頚部神経根を精度よく描出できていないため、診断は症候学的なものとなる。 すなわち、しびれの強い指があって、頚部の姿勢に依存する痛みであることで本症の診断となってしまうのが現実である。 」と書かれている。 このように、X線検査やMRI検査が必ずしも頚椎症性神経根症の診断に役立つわけではない。 今回、頚椎のX線検査やMRI検査を受けていないが、症状から私の病気は「頚椎症性神経根症」であると診断した。 治療法と自然経過はどうなのか? では、「基本的には自然治癒する疾患です。 症状が出ないように頚椎を後方へそらせないようにし、適切な方向への頚椎牽引や症状が強いときには消炎鎮痛薬の投薬などが行われます。 治るまでには数か月以上かかることも少なくなく、激痛の時期が終われば気長に治療します。 」と書かれている。 では、「保存的治療が第一選択肢であり、わが国で本症に対する手術治療が行われることは少ない。 薬物治療として、非ステロイド系消炎鎮痛剤, ビタミンB12、筋弛緩剤、安定剤などが使用されている。 頚椎の伸展位 後屈位:あごをあげる恰好 が症状悪化や遷延化の原因となるため、その恰好を避けるよう十分注意してもらう。 頚部のポジションに注意払って保存療法を行えば、疼痛が軽減する可能性が高い。 によれば、「頚椎症性神経根症の多くは保存的治療により軽快する。 手術療法により早期の症状改善が得られるが、長期的な成績は保存療法と差がないとする報告が多い。 」と述べ、頚椎症性神経根症の自然経過の文献的考察を行っている(表1)。 頚椎症性神経根症の自然経過 これら3件の情報から、治療法は保存療法が主流で、時間はかかっても、自然治癒するか軽快する病気であることを知ることができた。 嬉しい情報である。 この病気のメカニズムをまとめた 病名が分かり、その治療法と自然経過から、緊急な対応が必要ではないことを知ったので、この頚椎症性神経根症という病気のメカニズム(病態)を調べることにした。 首、肩、背、腕の解剖 その前に首、肩、背、腕の解剖を理解しておく必要がある。 学生時代の復習になるが、記憶に残っている知識は悲しいほど貧弱である。 脊椎は7個の頚椎と12個の胸椎、5個の腰椎と仙椎、尾椎からできている(図5)。 頚椎は茶色の部分で、頭蓋骨と胸椎の間にあり、軽く後向きに彎曲している。 図5.脊椎)より 頚椎を左側から見ると図6のようになるが、これをさらに詳しく見ると図7のように区別できる。 図6.頚椎の左側面像( より) 図7.頚椎の左側面像の詳細図(解体演書より) 図8.頚椎模型左側面 図9.頚椎・頚髄・頚神経模式図 (白:椎骨、青:椎間板、黄:頚神経、赤:椎骨動脈). 図9のように、頚椎は7個であるが、頚髄は8個の分節があり、頚神経も8本ある。 第1頚神経は後頭骨と第1頚椎の間から、第2頚神経から第8頚神経は、それぞれ一つ上の高位の頚椎の下(椎間孔)から出る。 頚椎と頚髄には約1. 5椎体のずれがある。 図10.頚椎模型前面(腹面) 図11.頚椎模式図前面(腹面) 図12.頚椎横断面(上側) 図13.頚椎・頚髄と神経根・椎骨動脈を前上方から見た模式図 図14.頚椎・頚髄と神経根・椎骨動脈断面模式図(より) 頚椎は、7個の脊椎から成り立っているが、上の2つと下の5つは形も大きさも大きく違い、機能や動きも大きく違う。 1番上の骨は2番目の骨を軸にして石うすのように回転する構造をしている。 3番目以降の骨は、それぞれががっちりと重なって首を支えることに適した形をしているが、あまり動けない構造になっている。 それぞれは、脊椎の前方部分が椎間板、後方部分が椎間関節で繋がっている。 椎間板は、ゴム状の円板でクッションの役割をし、上下の椎骨の前方部分である椎体と強く密着している。 この椎間板の中央部は髄核と呼ばれ、ゼリー状で弾力性に富んでいる。 髄核の周辺を線維輪が取り囲んでいる。 椎骨の加齢変化 椎間板は加齢によって水分を失って薄くなり、弾力が低下して、つぶれて面積が広くなり、上下の椎骨が安定性を保とうとして棘が出るような変形をする。 これを骨棘という。 脊椎の後方部分の椎間関節も軟骨が薄くなって隙間が狭くなり、修復するよに骨の変形が起きる。 正常な頚椎では、第5〜6、第6〜7、ついで第4〜5頚椎間の動きが大きいため、これらの部位の変形がおこりやすい。 このような頚椎の変形は、年齢とともに強くなっていき、高齢になるとほとんどすべての人にみられるが、大部分の人には症状がない。 この状態を「変形性頚椎症」あるいは「頚椎症」と呼ぶが、症状がなければ病気とまでは言えない。 しかし、骨棘の形成、関節の変形が、脊髄の通り道である脊柱管や、神経根の通り道である椎間孔を狭め、脊髄症や神経根症といわれる症状をおこすことがある。 これは「頚椎症性脊髄症」「頚椎症性神経根症」という病気である。 図15.椎骨の加齢変化 頚椎症性神経根症のメカニズム 頚椎症性神経根症のメカニズムは、椎骨の加齢変化により生じた骨棘が、神経根の通る椎間孔に突出して、椎間孔を狭くして神経根を圧迫することである(図16)。 図16.頚椎症性神経根症のメカニズム 図17.頚椎症性神経根症・頚椎症性脊髄症・椎間板ヘルニアのメカニズム 症状発現のメカニズム 1 知覚神経関係 頚椎症性神経根症の症状は、骨棘によって圧迫された神経根が刺激されて生じる。 その内の知覚神経関係についてまとめた。 図18.頚髄の断面模式図(より) 頚椎は7個の椎骨で構成されているが、頚髄は8個の髄節に分かれ、それぞれの髄節の左右の腹側(前側)から運動神経根が、背側(後側)から感覚神経根が末梢に出ている(参照)。 図18で示された赤色の運動神経根(前根)と青色の感覚神経根(後根)は合わさって頚神経となる。 後根の刺激では神経痛様の刺すような激痛が支配領域に放散する。 頚椎後屈や病変側へ側屈すると、肩から指先にかけてしびれと電撃痛が走る。 図19.デルマトーム(皮膚分節) 脊髄神経は皮膚感覚を支配している。 脊髄はそれぞれ番号が付けられていて、何番の脊髄が皮膚のどこを支配しているか示したものをデルマトーム dermatome と呼ぶ。 図20.第4から第8頚髄神経根のデルマトーム 頚椎症性神経根症で最も傷害を受けやすい第4から第8頚髄神経根に絞って皮膚感覚の分布を調べた。 拇指のしびれや痛みはC6(第6頚神経根)の圧迫、示指と中指のしびれや痛みはC7(第7神経根)の圧迫、環指と小指のしびれや痛みはC8(第8神経根)の圧迫に対応している。 図21.第4から第8頚髄神経根のデルマトームに対応した部位の図解 私の場合、右の拇指、示指、中指のしびれが強く、環指と小指にはしびれがないことから、C6(第6頚神経根)C7(第7神経根)が圧迫されていると推定できる。 症状発現のメカニズム 2 運動神経関係 神経根の前根の刺激では、筋に局所的な筋緊張が生じ、筋内の感覚神経を刺激するため、筋肉痛様の痛みが支配筋に生じる。 この痛みは安静臥床によっても軽快せず、咳、排便時のいきみなど、脊柱管内圧を上昇させるような原因で増強する。 また、頚椎後屈や病変側への側屈によって疼痛が誘発される。 ここで、頚神経に支配される筋肉を列挙する。 ( )内に支配神経を略号で表示した。 例えば、C5は第5頚神経を表す。 図22.首・胸・腕の筋肉 図23.首・背・腕の筋肉 図24.僧帽筋(C3、C4) 図25.肩甲挙筋(C3〜C5) 上部:肩甲骨を上方に引く 肩甲骨を上方に引く 中部:肩甲骨を内側後方に引く. 下部:肩甲骨を下内側に引く. 図26.大菱形筋(C4、C5) 図27.小菱形筋(C4、C5) 肩甲骨を内側後方に引く 肩甲骨を内側後方に引く 図28.前鋸筋(C5〜C7) 図29.小胸筋(C5〜C8、T1) 肩甲骨を挙上させる 肩甲骨を外側前方に引く 図30.大胸筋(C5、C6〜C8、T1) 図31.広背筋(C6〜C8) 上腕を内転させる 上腕を内転、伸展、内旋させる 図32.三角筋(C5、C6) 図33.棘上筋(C5、C6) 肩関節を屈曲・伸展させる 上腕を外転させる 図34.棘下筋(C5、C6) 図34.烏口腕筋(C6、C7) 上腕を外旋させる 肩関節を屈曲させる 図36.小円筋(C5、C6) 図37.大円筋(C5〜C7) 上腕を外旋させる 上腕を内旋・内転させる 図38.肩甲下筋(C5、C6) 図39.上腕二頭筋(C5、C6) 上腕を内旋・内転させる 肘関節を屈曲させ、前腕を回外させる 図40.上腕筋(C5〜C7) 図41.上腕三頭筋(C6〜C8) 肘関節を屈曲させる 肘関節を伸展させる 図42.肘筋(C6〜C8) 図43.腕橈骨筋(C6〜C8) 肘関節を伸展させる 肘関節を屈曲させ、前腕を回内・回外させる 図44.回外筋(C6、C7) 図45.円回内筋(C6、C7) 前腕を回外させる 前腕を回内させる 図46.方形回内筋(C7、C8 前腕を回内させる 感覚神経のデルマトームから、病変は右側のC6、C7の神経根にあると推定されたが、その支配下にある筋肉は、図27.前鋸筋(C5〜C7)から図45.方形回内筋(C7、C8 までの19の筋肉があり、筋肉痛が起きる筋肉は広範囲である。 図47.解体演書 上肢の構造と運動 なお、以上表示した首、胸、背、腕の25点の筋肉の画像は、PCソフト「解体演書 上肢の構造と運動」を使って作成した。 付随して起きている症状のメカニズムも考えた 患側の手指や前腕のしびれ、肩から指先への放散痛、肩や背部の鈍痛やだるさなどは頚椎症性神経根症のメカニズムから理解できる。 しかし、派生的に生じる両側の肩こり、首のこり、患側の背部に何カ所かの圧痛点があり、そのいくつかを圧迫すると、首を後屈した時と同じように、肩から指先にかけてしびれと激痛が放散するとか、健側にも筋肉痛が生じ、その中にも、首を後屈した時と同じように、肩から指先にかけてしびれと激痛が放散する場所がある。 それらの症状が生じるメカニズムは「椎間孔での骨棘による神経根の圧迫」だけでは説明がつかない。 この派生的、二次的症状も説明できるメカニズムを調べた。 そこで役立ったのが、「トリガーポイント」と「関連痛」という知識だった。 内臓の関連痛は、急性虫垂炎のMcBurney、Lanz、の圧痛点や胃潰瘍・十二指腸潰瘍のBoas、小野寺の圧痛点、狭心症や心筋梗塞の胸の中央、左肩の痛みなどを知っている。 しかし、筋肉痛について「トリガーポイント」と「関連痛」というメカニズムがあり、筋肉痛の多くはこの「トリガーポイント」が引き起こしていること知ったのは、今回の病気で得た大きな収穫だった。 今回学んだ「トリガーポイント」と「関連痛」を含めて、頚椎症性神経根症に関連する症状のメカニズムを図47にまとめた。 人が感じる痛みのメカニズムは複雑で、これだけで説明できるわけではないが、大きくステップアップしたと考える。 図48.頚椎症性神経根症に関連する症状のメカニズム 骨棘が神経根を圧迫すると、感覚神経が刺激されて痛み、しびれを感じ、それが脊髄に伝わり、脳に伝わる。 脳に痛みの情報が伝わると、脳は脊髄を通して、交感神経を刺激し、血管を収縮させ、そのため血管の流れが悪くなる。 血管の流れが悪くなると、酸素や栄養が不足し、痛みを起こす物質が生じる。 この物質が感覚神経を刺激する。 ここに「痛みの悪循環」が成立する。 そのほか、骨棘が神経根を圧迫すると、運動神経が刺激されて筋肉が緊張する。 筋肉が緊張すると血管が締め付けられ、血管の流れが悪くなる。 また、筋肉が緊張し収縮を続けると筋肉痛が起こる。 筋肉痛が持続すると「索状硬結」が生成される。 この「索状硬結」を圧迫すると強い痛みを感じるので「圧痛点」でもある。 この「索状硬結」=「圧痛点」の中で、圧迫を加えると周辺部まで強い痛みを感じさせる圧痛点がある。 これを特に「トリガーポイント」と呼ぶ。 また「トリガーポイント」を圧迫して生じる、周辺部まに及ぶ強い痛みを「関連痛」と呼ぶ。 触診可能な筋肉の場合、そこに触診可能な索状硬結があること 2. 索状硬結に鋭い痛みを感じる圧痛点(部位)があること 3. 圧痛点を押した時に、周辺部分を含む現在の痛みは圧痛点から来ていると患者が感じること 4. 痛みにより体の可動範囲に制限があること 図49.私が経験した圧痛点とトリガーポイント(背面) この図48で、患側である右側に圧痛点とトリガーポイントがあるのは当然として、健側の左項部にトリガーポイントがある。 それが理解できない。 日により、時間により変動はあるが、このトリガーポイントを圧迫すると、右肩から指先にかけて電撃痛としびれが走る。 首を後屈した時の症状とまったく同じ症状が起きる。 図50.私が経験した圧痛点とトリガーポイント(正面) 背面と比べて、正面には圧痛点はなく、トリガーポイントは2箇所だった。 図51.Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual Janet Graeme Travell と David Simons は「Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual」を著した。 筋や筋膜などに生じるトリガーポイントが痛みをはじめとする、さまざまな症状を引き起こしているという内容で、の発表である。 この書籍を、トリガーポイントの最重要文献として、Amazonで購入してみると、VOLUME 1 だけで1038ページもある大著であるが、分かりやすい図譜が豊富で、それに助けられて少しは理解することができた。 ケネディー大統領は椎間板ヘルニアと診断され、ヘルニアに対する手術を受けたが、症状が改善せず、続いて脊椎固定手術をして更に症状が悪化。 その後、Janet Graeme Travellが、椎間板ヘルニアは誤診で「Myofascial Pain and Dysfunction」であると診断し、Trigger Point治療を行って症状が大幅に改善、以来ケネディー大統領の主治医となったと聞く。 図52.誰でもできるトリガーポイントの探し方・治し方 こちらは Clair Davies が著した筋肉痛診療の実用書で、日本語訳であるため、読みやすく分かりやすい。 YouTubeで、トリガーポイントをアニメで説明する動画を見つけたので紹介する。 写真や文章では理解し難いところを動画は分かりやすく教えてくれる。 作者はドイツ人で、2013年6月6日に公開された。 この病気にどう対応するか を調べた結果、治療法は保存療法が主流であり、時間はかかっても、自然治癒するか軽快する病気であることを知った。 だから、その治療法は手術療法ではなく保存療法に決まってくる。 しかし、その保存療法にはいろいろあって、エビデンスに乏しかったり、自己療法が困難なものであったりする。 で「手術療法により早期の症状改善が得られるが、長期的な成績は保存療法と差がないとする報告が多い」という分析は、人のからだの自然治癒力、回復力に逆らわなければ、どれを選んでも大差はないということだろう。 そこで、自分なりの対処法を考えた。 神経根を傷めることをしない この病気は、で示したように、加齢現象で生じた頚椎の骨棘が、椎間孔を通る脊髄神経根を圧迫し、刺激することが本態である。 首を後屈するか患側に曲げる動作は椎間孔は狭くする。 そこで、まずこの動作を行わないように工夫する。 興に乗ると2〜3時間まったく休憩をとらないこともしばしばなので、頚椎を長時間後屈させていた可能性が高い。 そこで、図53のように、椅子を高くして、背筋を伸ばした状態で少し首を前屈し、モニターの中央に視線が向くように気をつけることにした。 健側を下にした側臥位で寝ると、頚椎が患側側に曲がり、椎間孔を狭くして、神経根を圧迫し症状が悪化するため、この位置での就眠は控える必要がある。 ただし、この寝かたはすぐ症状が出るので、無意識でも楽な位置に戻っているようだ。 だから、背筋を伸ばし猫背にならぬように注意する。 私は昔から猫背の恰好が嫌いなので、意識して気をつけてきたように思う。 首はゆっくり動かすのが肝腎である。 椎間孔を広げる 椎間孔を広げるようなストレッチがあれば行いたいと調べていて、日経新聞の記事を見つけた。 図54.逆さま首伸ばし 図55.座った位置での逆さま首伸ばしより 図56.頚部ストレッチ より 首を右側、左側に倒すのではなく、 斜め右側、 斜め左側に倒すから安全である 図57.胸椎ストレッチ より ちょっと考えつかない面白い発想である 首の筋肉をトレーニングする ストレッチは筋肉の緊張をとる効果はあるが、筋力を高める効果はない。 重い頭を支えるために首の筋肉をトレーニングする必要がある。 しかし、首を後屈させたり患側に曲げることはしてはいけない。 それをせずに首の筋力を高めるトレーニングを「頚椎の等尺性筋強化運動」と呼ぶ。 図58.頚椎の等尺性筋強化運動 立った状態で手を頭に当て、前後左右、手の押さえに逆らって頭を動かそうと力を入れる。 肩こり・首の痛み・背部痛への対応 頚椎症性神経根症では、神経根刺激症状ののほかに、肩こり・首の痛み・背部痛などの苦痛がある。 このメカニズムについては、と関連づけてかなり理解できたが、まだ未解明なところも多い。 指先に力を入れて強く圧迫(指圧)をすれば、痛くても後が気持ちよくて続ける場合もあるだろう。 TravellとSimonsは の中で、トリガーポイントを直接処置する治療法として、Trigger Point Injection(トリガーポイント注射)を推奨しているが、これは自分自身で行うことはできない。 自分で行える治療として、Deep Stroking Massage(ディープ・ストローキング・マッサージ)を推奨している。 これは指先をそろえて皮膚の上から筋肉を、往復して強く圧迫するマッサージである。 Daviesは、 の中で、長年マッサージをしてきた経験から、手を使ってマッサージ行うと手を傷めやすいので、マッサージ・ツールを使うことを勧め、その一つとして図57のセラケインを紹介している。 図59.セラケイン 「誰でもできるトリガーポイントの探し方・治し方」で紹介されているマッサージ・ツール 図60. セラケイン てこの原理で押すから、大きな力が要らない セラケインをAmazonで購入したが、大きく曲がったアームによって、手が届かない肩・腰・背中の望む場所を選べるので、トリガーポイントの発見が容易であった。 また、てこの原理で押すため、大きな力が要らず、虚血圧迫(指圧)やディープ・ストローキング・マッサージに使って重宝した。 1ヶ月ばかり使って、肩こり・首の痛み・背部痛などが軽くなったので、現在はたまにしか使っていない。 今回もそれを思い出して試みたが、効果はほとんどなかった。 痛みの範囲が、図50のように広く、痛みをもたらす病態が違うため、期待した効果がなかったのだろう。 ここ40年ばかりの間で消炎鎮痛剤を使ったのは数えるほどもないと思う。 薬で痛みを押さえることで、痛みの悪循環を断つ効果があることは分かっている。 また、胃腸は頑強にできていて、胃腸障害を起こすこともないはずだ。 しかし、薬を飲むのは好みでない。 肩関節周囲炎、腰痛症などがその大部分だった。 TravellとSimonsは の中で、トリガーポイントを直接処置する治療法として、Trigger Point Injection(トリガーポイント注射)を推奨しているが、これは自分自身に対して実行することはできない。 だから、この治療法も採らなかった。 まとめ 1. で、老化は確実に進行していると書いたが、それは間違いではなく、を受け、続けて、この頚椎症性神経根症という老化現象に起因する病気を患い、さらには、両耳に補聴器を装着するようになった。 この病気を患ったことから、知らなかったことを多く学ぶことができた。 その中でもトリガーポイントと関連痛に関する知見は面白かった。 私は医師になったころから「痛み」に興味があり、内臓疾患と関連痛の関係や東洋医学の経穴(ツボ)の文献によく目を通していたことを思い出した。 私が好きなの長年の苦痛を救った主治医が、このトリガーポイントを見つけ、それを学問的にまとめ、臨床治療に生かしてきた人であることを知り、感動を覚える。 この病気に自分ならどう対応するかをまとめたが、実際に続けたのは、神経根を傷めることをしないことのほかは、圧迫とマッサージくらいである。 面倒なので続かなかったが、椎間孔を広げるストレッチは面白かった。 今回のまとめ作業は非常に楽しいものだった。 ものを作る、構築する、メカニズムを調べることは、今も変わらず一番したいことである。 これをまとめ始めたころは、苦痛がひどく、精神的にも落ち込んでいたが、いつの間にか痛みも軽くなり、これまでの自分に戻ってきている。

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【頚椎症性脊髄症の症状】腕や手の痛みやしびれ、足のもつれや頻尿が起こる重症|MYWELL

頚椎 症 性 神経 根 症 脊髄 症 と は

今回は『 頚椎症性 《 けいついしょうせい 》 神経根症 《 しんけいこんしょう 》/ 頚椎症性 《 けいついしょうせい 》 脊髄症 《 せきずいしょう 》』について、神戸市にある 副院長の 鷲見正敏 《 すみまさとし 》先生にお話をうかがいました。 この病院は、「脊椎外科」、「手の外科」の専門病院として発展し、脊椎手術においては、年間308件(頚椎125件、腰椎158件、胸椎25件)の実績(いずれも2008年度)を持つ全国でも有数の病院です。 頚椎症 《 けいついしょう 》とは 頚椎は年齢とともに変化します。 椎間板が弾力を失ってクッションとしての役割が果たせなくなり、椎骨と椎骨がこすれ合って変形したり、骨の並び方が変わったりします。 このように、「頚椎に年齢的な変化が起こること」を頚椎症、正確には 変形性頚椎症 《 へんけいせいけいついしょう 》と言います。 これは誰にでも起こることであって、このこと自体は病気ではありません。 この変形性頚椎症が起こったために、脊髄や神経根が圧迫されて、そのための痛みやしびれや麻痺が出てくる場合を、頚椎症性脊髄症あるいは頚椎症性神経根症という名で呼びます。 これは病気の状態です。 例えば、頚椎の年齢的な変化が中年以降急激に起こってきたり、その変化が強かったり、あるいは、頚椎の中を通る脊髄や神経根の通り道が生まれつき狭 かったりすることがあります。 症状 頚椎の中には、 脊髄 《 せきずい 》という神経と 神経根 《 しんけいこん 》という神経が通っています。 頭蓋骨の中にある脳から脊髄が下りてきて頚椎の中に入り、神経根を介して手に神経が出て行きます。 あるいは、脊髄は頚椎を通ってそのまま足の方へ下りて行きます。 頚椎症性神経根症では、脊髄から外へ出てきた神経根という神経が圧迫されるために、手のしびれ、手の痛み、 頚 《 くび 》から肩、腕、指先にかけてのしびれや痛み、そして、手の指が動かしにくいなどといった、上肢や手指の麻痺の症状が出てきます。 足に行く神経、つまり脊髄は圧迫されないので、上肢(腕)の症状だけが出てきます。 一方、頚椎症性脊髄症では、足へ行く神経も圧迫されるので、圧迫されている部分より下の手と足の症状が出てきます。 手に行く神経が圧迫されると、手がしびれたり、あるいは手の指が動かしにくかったり、 肘 《 ひじ 》や肩が動かしにくくなったりという症状が出ます。 足の場合には、足のしびれはもちろん、歩きにくくなったり、階段の昇り降りが不安定になったりという症状が出てきます。 ひどい状態になると、と言って、尿や便が出にくくなったり、あるいはもれ出てしまったりという症状も出てくることがあります。 脊髄と神経根の違い 治療には大きく分けて保存的治療と手術がありますが、頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症とを分けて話をしなければなりません。 なぜこの二つを分けて考えなければならないかと言うと、脊髄と神経根では神経の種類がまったく違うからです。 脊髄というのは神経の塊です。 脳と同じで、そこには神経の複雑なネットワークがあります。 ですから、脊髄が圧迫されると非常に重要な機能が失われる可 能性があります。 神経根というのは、その複雑な脊髄から出て行った1本の神経にすぎず、また、脊髄に比べて丈夫にできています。 このことを患者さんに説明する時に、パソコンを例にとって話をしています。 パソコン本体のコンピューターを脊髄、そこから出ている1本の電気コードを 神経根に例えます。 脊髄、つまりコンピューターは非常に複雑な機能を持っていますが、神経根というのはそこから出ている電気コードで、それは少し踏んだく らいでは、そう簡単に潰れたり切れません。 切れてもつなげば元に戻ります。 ですので、それほど大きな問題にはなりません。 しかし、コンピューターは踏んだり蹴飛ばしたりしたら潰れてしまいます。 一度潰れてしまったコンピューターは、お店で修理してもなかなか直りません し、直ってもスッキリしないことが多いのです。 このように、頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症は予後や将来の状態がまったく異なります。 頚椎症性神経根症の治療 神経根症はとても症状が強い場合があります。 腕が痛み、しびれて、とても不快な症状が出ます。 最初の症状は重いのですが、安静を保つことや薬を使うことで、症状が楽になります。 これを保存的治療といいます。 手術まで考えることはあまり多くありません。 例えば、この施設では、頚椎手術を年間120件くらいしていますが、そのうち頚椎症性神経根症で手術をす る人は年に1人か2人です。 保存的治療で良くなることが多いので、手術の必要のないことが多いのです。 痛みが強い時はステロイドホルモンの内服をします。 そしてもう一つは、私たちが使っている『神戸枕』の使用です。 この枕は、頚を前に曲げる姿勢(前 屈)をとらせるような形をしています。 頚を後ろに曲げる(後屈)と症状がひどくなるため、枕を使って頚を前屈させます。 これである程度の効果はあり、痛み に関しては90%消失します。 ただし、しびれは残ります。 外来で診察の合間に、この枕を使って横になってもらい、楽になった人はそれを持ち帰って家で安静 にしてもらっています。 『 神戸枕 《 こうべまくら 》』とステロイドホルモンの内服で良くならない場合は神経根ブロックをします。 頚椎症性神経根症で手術の適応となるのは、保存的な治療法をしてもなかなか症状が良くならない人と、圧迫によって上肢のしびれや痛みだけでなく、麻痺 が出てきている人です。 このような場合は手術をすることもありますが、割合としてはかなり少ないです。 実は私も頚椎症性神経根症を経験したことがあります。 それは非常に痛くて不快なものです。 長期間にわたって不快な思いをしたり、仕事に支障をきたした り、わずらわしい思いをすることも多くて精神的にも参ってしまいます。 姿勢によって苦痛を感じる時もあれば楽な時もあり、また、通常の痛み止めを飲んでも 効かないので、初めは精神的なものではないかと思うこともありました。 このように自分が患者となったことも、枕の開発の一因となっています。 頚の姿勢と神戸枕 保存療法で患者さんが気をつけることの基本は姿勢です。 脊髄症や神経根症を起している人は、病気の状態によって違いはありますが、多くは 前屈 《 ぜんくつ 》(頚を前に曲げる)をすると神経がゆるむ傾向にあります。 後屈 《 こうくつ 》(頚を後ろにそらす)をすると神経が圧迫される状態になります。 ですから、後屈をとらないような姿勢がいいと思います。 具体的には、布団を干すとき、押入れのものを取ったりする動作は辛いと思います。 また、コンピューターを使うときは、椅子を高くしたり、モニター画面 を向こう側に倒して、覗き込むような姿勢をとるようにすると良いでしょう。 車の運転は、ワゴン車などシートの高い車の方が楽にできます。 『神戸枕』は右の写真のように前屈の姿勢をとらせるような枕です。 特に神経根症の人によく効きます。 ちなみに手術後の患者さんには、神戸枕は使いません。 かえって姿勢が悪くなるからです。 また、肩こりだけの人にも良くない場合があります。 頚椎症性脊髄症の治療 脊髄症も同じように枕を使っています。 以前は、入院して頚椎の 持続牽引法 《 じぞくけんいんほう 》をおこなっていました。 効果はありますが入院しなければならず、また、持続牽引法といってもずっと牽引しているわけではありませんでした。 第一の目的は、頚椎の安静を保つことでしたので、今は多くの場合、『神戸枕』を勧めていることが多くなっています。 頚椎症性脊髄症の場合は、コンピューターが潰れそうになっているわけですから、脊髄の圧迫による症状が出てきた場合は、手術をしてそれをゆるめてあげた方が良いというのが基本的な考え方です。 ただし、その患者さんが「どのくらい不快に思っているか」や「どのくらい日常生活が不自由になっているか」ということは無視できないと思います。 です から、脊髄症があっても患者さんがそれほど強い症状を持っていない場合には、手術を強くは勧めていません。 基準にしているのは、日本整形外科学会頚部脊椎 症性脊髄症治療成績判定基準です。 右の表1のような評価項目があり、正常は17点満点となります。 13点以上の人は、それほど日常生活に不自由を感じていないことが多いです。 「ちょっとおかしい」、「手がしびれる」、あるいは「足がちょっと動かしにくい」ということで、医者に診てもらったら「脊髄症ですよ」と診断されるような状態です。 これが13点未満になると、明らかに日常生活に不自由を感じてきます。 「階段を下りるときに絶対に手すりが必要」とか、「お箸が使いにくくなってき た」とか、普通の日常生活が送れなくなった人は、だいたい13点を切った人です。 このように明らかに不自由を感じている場合は、「手術をしましょう」とい う話をしています。 箸又はスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない。 スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない。 不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる。 箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない。 歩行できない。 平地でも杖又は支持を必要とする。 平地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する。 平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない。 正常 手術の適応を見極めることが重要 先の評価で13点以上の比較的軽症の脊髄症の患者さんの場合、患者さんが積極的に手術を希望されないことも多く、手術をせずに経過を観察していること が比較的多くあります。 このように、手術をしなくても生活できている人が多いため、軽症の脊髄症の患者さんでしかもMRIでの脊髄圧迫がさほど強くない方に対しては、手術を強く勧めていないことが多いです。 症状がそんなに強くなくても、あまり日常生活に困っていなくても、脊髄の圧迫の程度が強い患者さんの場合は、手術をした方が良いのかもしれません。 逆 に、しびれなどの自覚症状が強くても、日常生活ではきちんと動けていて、脊髄の圧迫がそんなに強くなければ、様子を見てもよいのではないかと、今の段階で は考えています。 ただし、一人一人の患者さんについては、色々な条件を考えなければならないと思います。 例えば、30代40代の若い人で脊髄症の症状が出てきて、日常 生活はそんなに困ってないがものすごく不安であると言う人は、私は手術をしても良いと考えます。 一方、高齢で心臓病や糖尿病などの持病があって手術後に問 題が起こる可能性がある人や、家からあまり出ない人などは、患者さんの背景や年齢など色々な要素から判断しなければならいので、脊髄症であっても手術をす べきかどうかは一概には言えません。 よくお医者さんで「寝たきりになりますよ」と言われることがあります。 ちょっと手のしびれが出たので、お医者さんに行ってMRIを撮ったら、「脊髄が 圧迫されているので、寝たきりになる可能性がありますからすぐに手術しましょう」ということがよくあります。 しかし、軽症の脊髄症の方がすぐに寝たきりになることは少ないと考えています。 変形性頚椎症とは少し異なりますが、頚椎のでは転倒などのけがで寝たきりになると言われますが、ある先生の調査ではそうなる確率はおよそ14%と、意外に寝たきりになる人は多くないという結果が出ています。 手術の実際 MRIで脊髄の圧迫が1箇所か2箇所までの場合は、頚の前側からを しています。 前方除圧固定術は、比較的症状の改善が早く、ぱっと良くなることが多いのですが、固定された部分の下あるいは上の部分に負担がかかり、術後し ばらく経過した後に症状が悪くなることがあります。 ですからあまり広い範囲(3箇所以上)で脊髄に圧迫がある場合や生まれつき脊柱管(神経の通り道)が狭 い場合は、前方からはあまりしないようにしています。 また、固定しようとしている部分の上下で、もともと頚椎が不安定な場合は、そこまで固定する範囲を広 げるか、それを含めて3箇所以上になった場合は、前方ではなく後方から手術をしています。 実際には前方の固定術はあまり多くなく、後方(頚の後ろ側)からの)を主にしています。 昔はの椎弓形成術をしていましたが、一時的に上肢が上がらなくなるなどの麻痺が出ることがあるため、その発生頻度がより少ない縦割式に変更しました。 また、できるだけ頚の後ろの筋肉を温存するよう工夫しています。 術後のカラー(装具)もしていません。 カラーをすると筋肉が弱くなり、また、カラーに頼ってしまい、どちらかというと前にお辞儀をしたように姿勢が悪くなります。 術後3日目から起きて、術後2週間で抜糸です。 感染などの問題がなければ、抜糸とともに退院することも可能ですが、患者さんの不安を考慮して、術後3週間で退院としています。 脊椎専門医を受診することが大切 頚椎症性脊髄症を起しても、症状がそれほど強くない場合は、すぐに状態が悪くなって寝たきりになってしまうことはまずありません。 ですので、あわてずに脊椎専門医のいる病院を受診することをお勧めします。 このように、悪くなる場合は、割りと早くに悪くなりますので、初診から1~2年の間は定 期的に受診して、経過を診てもらうほうが良いと思います。 神戸枕に関するお問合せ先: 宮野医療器(株)ミヤノ健康ショップ 「モイヤン」神戸店 〒650-0017 神戸市中央区楠町5丁目4-8 TEL: 078 371-2146 FAX: 078 371-2931.

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