風花雪月 フェリクス。 会話集/支援会話/フェリクス(セイロス聖教会)

会話集/支援会話/フェリクス(セイロス聖教会)

風花雪月 フェリクス

「おれ、もうひとりでおかいものいけるもん!」 「あー…いや、フェリクスにはまだちょっと早いんじゃないか」 「兄上が行けるならおれも行けるもん!!」 そう言うと俺の小さな弟フェリクスは泣きだしてしまった。 隣の父の目線が痛い。 これはお前が引き起こしたことなのだから責任を取れと暗意に言っている。 確かにこれは俺の失言だった。 フェリクスの前で俺は父上に自分の目利きで探し出した掘り出し物を自慢してしまったのだ。 中々の大業物で父上も喜んでいたせいかそれを聞き咎めたフェリクスは自分も行きたいと我儘を言い出したのだ。 俺とフェリクスは少し年が離れている。 その年齢差を考えれば一人で買い物に行かせるなんてまだ難しい。 だが、市井には庶民の生活を知るためだとかいって父上が勝手に連れ出していくのだ。 自分が飲みたいだけで酒屋にも連れて行く。 フェリクスが喜ぶのだからいいだろうと安直に言うが流石にまだ早すぎる。 たとえロドリグが強かろうが酔っぱらいだっているような場所にフェリクスを連れて行くのはいただけない。 可愛くて自慢したいのはわかるが。 「おれも、ひとりでいきたい!」 「だめだ、一人で買い物なんてまだ早いぞ」 「うう、ぅ…グレンあにうぇ…」 フェリクスのぷくぷくしたほっぺたがさらに膨らんで不機嫌そうになったのをグレンはまたしまったと思った。 「ちちうえー!!グレンあにうえがいじめる!!」 フェリクスは父ロドリグの膝の上に飛びついてぎゅうと抱きついて泣きだしてしまった。 よしよしと宥めるロドリグは困ってはいるようだったがにやにやと笑っている。 「そうか…でもな、グレンはフェリクスのことが大事だから心配しているんだぞ?」 「でも、でも!フェリクスは一人でお買い物いけるもん…」 「買い物に行きたいなら俺が連れて行ってやるぞ?」 「一人で行きたいの!父上はいらないの!」 「い、いらない…」 いらないとは言ったものの離れる気はないらしい。 グズグズとロドリグの膝の上でフェリクスはぐずり続けている。 「兄上も嫌か?なんならシルヴァンでもいいぞ?」 最近のフェリクスのお気に入りはグレンより少し下の幼なじみのシルヴァンだ。 自分がついていくのが一番だがついてこさせないというのならば最悪シルヴァンでもつけておくほうがマシだ。 あれは頭がいいからどうやったらこの暴君を手なずけられるかよくわかっている。 「兄上もシルヴァンもいや…」 「あのなぁ、フェリクス…外は危ないんだぞ?王都とはいえたまに変なやつもいるし、一人じゃ攫われてどっかくらーいところに…」 わざとらしくおどろおどろしい声をグレンが出してフェリクスを脅せばその大きな目が見開かれてみるみる涙が溜まっていく。 ちとやりすぎたかと思ったがこれくらい脅かしておかないと勝手にどこかに飛び出していくかもしれない。 それくらいにフェリクスは行動力がある。 「ははうえや、あにうえや、ちちうえに会えなくなるの…?」 「そうだぞ?殿下やイングリットにもシルヴァンにもな」 「おいグレン、あまり脅かすな」 父が更に脅かそうとするグレンを止めるが父はフェリクスを可愛いからと甘やかし過ぎなのだ。 まぁ、確かに最初から全く可愛くないと言われ続けてきた自分がいたから余計になのだろう。 「やだ!!いなくなっちゃうのやだ!」 ぽろぽろと涙をこぼしながらフェリクスは今度はグレンに抱きついてきた。 それを落とさないように抱きかかえてやって頭を撫でる。 「だからお出かけはもうちょっと大きくなったらな?」 「………うん…」 ちょっと可哀想だとは思うが仕方がない。 大紋章持ちのフェリクスは誰かに誘拐などされでもしたら恐ろしいことになる。 本人が強くなるかせめて誰かに助けを求められるようになってからではないと一人で外には出せない。 「あにうえ!あにうえ!!」 ロドリグについて領地に戻っていたグレンが二週間ぶりにフェリクスを預けていた王都に戻ると再会を嬉しがるようにすぐに馬に乗ったままだったグレンに手を伸ばしてきた。 グレンはもうひとりで十分馬に乗れる。 下馬するとその胸にフェリクスがぎゅうと抱きついてきた。 「元気か?フェリクス」 「兄上!おれ、ディミトリとお買い物行く!」 「え?は?」 そのふわふわほっぺたを撫でてやろうとした手が止まった。 「あのね、ディミトリも一緒に行くって!そしたらね、おれひとりじゃないからいいよね!」 やられた。 まさか殿下を巻き込んでくるとは想定していなかった。 一応シルヴァンには先にもしフェリクスに買い物に誘われたら一緒に行ってやってほしいというのは伝えていたのだが殿下に声をかけるとは思っていなかった。 フェリクスに遅れて出迎えに来てくれたこちらもまた可愛らしい殿下にグレンは頭を下げた。 「殿下…」 「あんしんしていいぞ、グレン。 フェリクスはおれが守るからな!」 へへんと胸を張る様子は大変可愛らしいのが、兄ぶっているが、ディミトリもフェリクスと同い年だ。 ほんの少しだけ生まれが早いぶんディミトリのほうが背が高いが年齢は変わらない。 「はぁ…これはどうするか…」 「楽しみだな、ディミトリ!」 大いに盛り上がる二人を見てグレンは頭を抱えた。 シルヴァンが呼び出されたのはグレンの部屋だ。 要件はわかりきっているが故にいま一番会いたくない。 が、仕方がない。 ノックをすると不機嫌そうな声が返ってきた。 「入るぞー」 「お前がいてなんで言いくるめられなかったんだ」 部屋に入ると開口一番飛んできた言葉にシルヴァンは首を竦めた。 明らかにグレンは不機嫌そうに眉をひそめている。 「いやー、俺としても言いくるめようとしたんだけどさ、二人でお昼寝中に話しが盛り上がっちゃったらしくてさ、そりゃ俺じゃどうにもできないって」 「チッ…ここからはお前も本気で巻き込むからな」 「まじかよ…はぁ、まぁできることなら?」 グレンは立ち上がると机に地図を広げた。 それはフェルディアの城下町の地図だ。 すでにその地図にはいくつか書き込みがされている。 「今度俺が先に研ぎに出しておいた短剣をフェリクスに取りに行かせようと思っている、それをおつかいにしようと思うんだがどうか」 「いいんじゃないか?フェリクスも殿下も剣とか好きだし…いや、でもそれだけだと物足りなくないか?もう一つくらい追加したほうが」 「お前はフェリクスと殿下を危険に晒せと?」 「目が据わってるっておい、ちがうって、あんまり歯ごたえない試練だと達成感ないだろ?達成感あった方がしばらく落ち着くと俺は思うぜ」 結局グレンも父親と同じくらいに弟のフェリクスが可愛くて仕方ないのはシルヴァンにもわかる。 なんの打算もなくただ家族として慕ってくれるフェリクスが可愛いのだろう。 子供ながらも既に自分たちの周りには打算的な大人やそれ以外がうようよしていた。 ただお互いに口には出しにくい話題なだけだ。 シルヴァンだってもう兄にいじめられたか数えるのをやめた。 もし、自分がフェリクスのように可愛らしければ兄上にいじめられることもなかったのかと考えたことはあるが可愛げというより紋章の問題なのだからシルヴァン自身にはどうしようもできないことだ。 「確かにな…じゃああと一つ追加するか…何か買ってくるとかがいいか」 「そうさな、ロドリグ殿の好物を買ってくるとかどうだ?ロドリグ殿も喜びそうだ」 「それはいいな、だがブルゼンは城下に売っていたか…」 「あ、ロドリグ殿ブルゼン好きなんだな」 ブルゼンは甘い菓子のようなパンだ。 なんとなくイメージとは違うと思ったが言われてみれば案外あの人は甘党かも知らない。 酒も好きなようだが酒自体というよりきっと賑やかな雰囲気が好きなのだろう。 「俺は味覚は父親に似なかったがな」 「フェリクスも割と好きだったよな、ブルゼン」 「あぁ…いや、だが流石に市井に売っているものをフェリクスに買わせるのは毒味もあるし心配だ」 ロドリグ殿が市井に出て飲食しようが本人にはちゃんと毒が効きにくいのと判断できるからだがフェリクスにそれはまだ難しい。 もし悪意のある者が毒入りのブルゼンを売りつけてしまえばロドリグ殿の口にも入ってしまうかもしれない。 毒入りではなくても傷んだものを選んでしまうかもしれない。 「それはちゃんと先に伝えておけば大丈夫だろ?まさか本気でなんの用意もしなくておつかいには行かさないよな」 「………失念していた」 「おいおい」 そうだ、折角なのだから城下に伝えて厳重な警備にしておいて店の者たちにもしっかりと伝えておけば危険は少ないだろう。 これは流石にグレンの力だけではできない。 「それか店員さんだけ自分ちの誰かに変わってもらっておくとか」 「それもいいな、ブルゼンはそうするか。 武器屋はフェリクスも顔を知っているから代わってもらうわけにはいかないが」 「殿下もついていくならちゃんと陛下にも話を通さなきゃ駄目だろうしな」 有力貴族の嫡子といえど、グレンがランベールに会うことは中々むずかしいが父から伝えて貰えれば大丈夫だろう。 「よし、父上に伝えてくる」 「あ、あと手回してるのはフェリクスにバレないようにな」 「わかっている」 相手にならないような手合わせでも手加減したらそれに対して怒るような弟だ。 街ぐるみで見守っていただなんて知られたらものすごく怒るだろう。 口さえも聞いてもらえないかもしれない。 グレンがロドリグにフェリクスのお使いの件について話せばロドリグは珍しくもうなり声を出すほどに考え込んだ。 やはりあれくらいの子供を見守るとはいえ一人で外に出すのは気が引けるのだろうとグレンは思った。 「…どうやったら陛下をバレずに連れて来られると思う?」 「は…?」 「この話を俺が伝えたら絶対ランベールは俺もついていくとか言い出しかねんぞ、というか絶対ついてこようとする」 「流石に陛下は…」 「だからどうやったら隠れられるかお前も考えてくれ」 一国の王がそんな簡単に市井に降りてきていいものなのか、とグレンはまだ自分も子供と言える範疇なのに頭を抱えた。 反対されないだけ良かったのだろうか、となんとか自分を納得させることにした。 諦めたともいう。 「あー、困ったなぁーどうするかなー」 「あにうえ、どうしたの?」 グレンの拙い演技力でもフェリクスはとてとてと興味津々に近寄ってきた。 「あぁ、フェリクス…いや、武器屋に短剣を研ぎに出していてそろそろ取りに行こうかと思ってたんだが急に用ができてな…うーん、気にはなるが明日にするか…」 「おれ!おれが兄上の代わりに行ってくる!!」 フェリクスはぴょんぴょんとグレンの前で必死に飛び上がってアピールしている。 行く気は満々のようだがまだ少し早い。 「いや、でも一人だと危ないし」 「ディミトリと行くから!」 「そうか?じゃあフェリクスに頼もうかな」 「フェリクスがお使いに行くのか?」 ちょうどタイミングを見ていたロドリグもフェリクスの前にしゃがんでその頭を撫でた。 「うん!俺行ってくる!」 「そうか、なら俺もお使い頼んでいいか?ブルゼンがちょうど食べたくてな」 「大丈夫!ちゃんと買ってこれる!」 「そうかそうか、じゃあお金を渡しておくから落とすんじゃないぞ」 ロドリグは自分の布袋から小銭を取り出すとフェリクスの肩からかける袋にその小銭を入れた。 その袋は母が縫ったものでフェリクスのお気に入りだ。 「わかった!じゃあおれディミトリのところにいってくる!」 我慢できずに袋に小銭を入れられながらもその場で足踏みをしていたフェリクスはすぐに部屋から出ていってしまった。 「さて、じゃあ準備をするか…父上は陛下と来るんですよね」 「ああ、先にフェリクスの後をつけておいてくれ」 グレンは簡単な変装をしてフェリクスを追いかけた。 フラルダリウスの居室から出たフェリクスは一直線にディミトリの部屋に向かった。 「ディミトリー!」 フェリクスが背伸びをして扉についたノッカーを叩くとディミトリが出てきた。 「フェリクス、どうしたんだ?」 「今から、兄上と父上のお使いに行くから、ディミトリもついてきて!」 「そうなのか、父上、いいですか?」 ディミトリの部屋にはちょうど父であるランベールがいたらしい。 軽装でディミトリに勉強を教えていたようだった。 「そうか、気をつけてついていってやるといい」 「はい!陛下、行ってきます!」 ディミトリと遊ぶ間柄で家族で付き合いがあるフェリクスはこの国の主であるランベールに対しても特に物怖じをしたりしない。 父親の影響も多分にあるのだろうが。 フェリクスがディミトリの部屋に入ったのを確認して先にグレンは市街に降りた。 先にお触れを出していたように市街を囲む城壁は閉じてしまってだれも入ることも出ることもできない。 警備兵もいつもより多い。 シルヴァンは先にもう市街に来ていた。 「もうそろそろ殿下とフェリクスが降りてくるぞ」 「りょーかい」 シルヴァンはその目立つ赤い髪を布を巻いて隠していた。 確かに髪が見えなければバレることは少ないだろう。 「行ってきます!」 「お気をつけて!」 城門の前の門番にももちろん話は通してあるので止められることなくフェリクスとディミトリは走って市街に降りてきた。 市井の商人たちや通行人もその姿に一瞬目を奪われるがすぐに自分の仕事に戻る。 フェリクスもディミトリもキョロキョロと周りを見ている。 フェリクスはまだ父や兄と出かけたことはあるがディミトリ自身はほとんど外に出たことがないはずだ。 フェリクスのお供だとはいうがディミトリも市街が気になっていたのだろう。 シルヴァンとグレンは物陰からわからないようにそっと二人の後をつけていく。 「そういえばお使いって何をするんだ?」 「兄上が預けた短剣をとりにいくのと、父上のためにブルゼン買ってくるんだって」 「なら短剣は重いからあとにしよう」 「うん!」 フェリクスが走り出さないようにディミトリはその手を握った。 その手を機嫌よさそうにフェリクスがぶんぶんとふりまわす。 店の前にはものすごくわかりやすいように看板を立ててもらった。 初めて市街に下りるディミトリでもわかるだろう。 「今のところは順調だな」 「ロドリグ様と陛下も来てるぞ…ってか目立ちすぎじゃないか」 グレンとシルヴァンが隠れている場所とは別のところにロドリグとランベールの姿が見える。 かなりの変装をしているがロドリグはともかくランベールの元々の体格の大きさで隠れるのもやっとのようだ。 それをなんとかロドリグが押し込めている。 市街のものは見てみぬふりをしているがそれも辛そうだ。 「あ!ねこ!」 ディミトリとフェリクスが店を探しているとフェリクスがディミトリの手を振り払って走り出した。 その先には猫が毛づくろいをしていた。 「あっ、フェリクス!」 フェリクスは一直線にその猫に向かって走り寄ったのだが、何かに躓いてそのまま転んでしまった。 慌ててディミトリがそのフェリクスに駆け寄る。 気のせいか市街の通行人がみんなあっと声を出した。 それはあとをつける四人も同じだ。 さっきまで物陰にランベールを押し込もうとしていたロドリグが今度はランベールに羽交い締めにされている。 気持ちはわかるが今出てしまったら水の泡だ。 グレンも拳を握って気を落ち着けようとしていた。 フェリクスのあまりの勢いで驚いたのかネコはどこかににげていってしまった。 その事実にもフェリクスはつらくなってくる。 転んだせいで膝が痛い。 「ね、ねこ、ねこさん…」 「フェリクス、大丈夫か?」 ディミトリが再びフェリクスを起こそうとするもフェリクスは立ち上がれずにそのままわんわんと泣きだしてしまった。 「いたいー!ねこさんいなくなっちゃったー!!」 フェリクスがどれだけ大声で泣いても抱き上げてくれる人も膝を払ってくれるような大人もいない。 いや、人はいるのだが見守ってほしいと言われているために心配そうに遠巻きに見ているしかないのだ。 「フェリクス…」 「おうちかえりたい…」 泣きやまないフェリクスの頭を根気よくディミトリが撫でて慰めようとしているがフェリクスは泣き止みそうにない。 しかもずっと泣き続けるフェリクスに引っ張られてしまったからか慰めていたディミトリの目さえも潤んで肩が震えている。 「ああ、無理だったか…」 ずっと道で泣かせたままというわけには行かない。 できる限り我慢しようとしていたグレンだったが迎えに行くかと物陰から出ようとすればとなりのシルヴァンに裾を引かれた。 「もうちょっとだけ様子見ようぜ、ここで出たら見てたのわかるし、ほら殿下が」 言われてグレンはもう一度二人の様子を観察する。 確かにディミトリも泣きそうだったが手の甲でぐしぐしと顔を拭うと再び諦めずにフェリクスをなだめ始めた。 「グレンとロドリグ殿にフェリクスが自分で行くって言ったんだよな?ここで帰ったら恥ずかしくないか」 「うぅ…」 「な?もうちょっと頑張ってお使いちゃんとできたらかっこいいぞ」 「ほんと…?」 「ああ、あ!ほらさっきのネコもフェリクスの事応援してくれてる」 ディミトリが指差した方には逃げ出した猫がそろそろと戻ってきて顔を拭っている。 「ねこさん…」 「今度はゆっくりだぞ」 ディミトリの手を取ってフェリクスはよろよろと立ち上がった。 見たところ転びはしたものの怪我はなさそうだ。 大人二人と子供二人は肩をなでおろした。 ディミトリに言われたとおり今度はゆっくりとフェリクスは猫に近づいた。 猫はフェリクスを一瞥したものの逃げずにそのまま毛繕いを再開し始めた。 「ねこさん!」 「あまり大きい声も出しちゃだめだぞ」 フェリクスは片手で自分の口をおさえながらその日に当たってふかふかの毛皮に触れた。 フェリクスに撫でられても猫は逃げ出さずにおとなしく撫でられている。 「ふぁ…ねこさんかわいい」 さっきまで泣いていたフェリクスはにこにことしながら猫をなでてご機嫌そうだ。 ディミトリも安心したように見える。 「フェリクス、まだお使いの途中だろ?猫さんにばいばいしないと」 「うん…ねこさんばいばい!」 フェリクスはまだ猫を撫でていたそうだったがディミトリが促すと猫に別れを告げて立ち上がった。 「あ、あそこにブルゼンって書いてる!」 先ほど転んだことで学習したのかフェリクスは今度は転ばないように早足でその店に向かった。 その後をディミトリがついていく。 「………ディミトリじゃなくて陛下が男泣きしそうなんだけど」 「あれは父上に任せておけばいい、目を離すな」 シルヴァンがロドリグとランベールの方に目を取られていたのをグレンは頭を掴んで正面を向かせた。 気を取り直したとはいえまだお使いは終わっていない。 帰るまでがお使いだ。 「ブルゼンひとつください!」 「はいよ、二人でおつかいかい?偉いねぇ」 「えへ」 フェリクスが渡された小銭をお気に入りの袋から取り出すが店の棚のところまで届かない。 ディミトリがそれを受け取って背伸びして店の人間に手渡した。 店の人間ではないのだが。 褒められたフェリクスとディミトリは嬉しそうだ。 「はい、落とさないように気をつけてね 「ありがとう」 「ありがとう!」 同じようにディミトリが店員から袋を受け取ったがそれをフェリクスには渡さなかった。 「ディミトリ、おれがもつ」 「フェリクスはまだ短剣も持たなきゃいけないだろう?軽いからこれはおれが持つよ」 「むぅ…わかった…」 もしこれが逆で短剣をディミトリが持つといったらフェリクスは怒っていたかもしれない。 軽いとわかっているブルゼンだからディミトリに持たせてもいいと思ったのだろう。 何せお使いを頼まれたのは自分なのだ。 メインであるそれをついてきてくれたディミトリに任せるのはかっこ悪い。 「フェリクス、武具屋はどこだ?」 父上と兄上と一緒に武具屋は何度か来たことがある。 その記憶を辿ってフェリクスは人混みの中を歩く。 ディミトリがはぐれたら可哀想だから手を繋いで見たことのあるところを歩いていると樽に剣や槍が立てられている武具屋にたどり着くことができた。 「いらっしゃい」 「兄上から研いだ短剣をもらってくるようにいわれたの」 「お名前は?」 「ふぇりくす、ゆーご、ふらりゅだりうす!」 余りに可愛らしい舌っ足らずな発音に店主は口を押さえた。 ディミトリもかわいらしいとおもったのだが自分も少しまだミドルネームの発音は怪しいので人のことは言えない。 「グレン様からご依頼された短剣ですね、はい、どうぞ。 大丈夫ですか?」 手渡された布にくるまれた短剣はフェリクスには少し重い。 首から下げた袋には入り切らないままに片手で抱えている。 「フェリクス、大丈夫?」 「だいじょうぶ!」 これだけ重そうだと先程のように走ることもないだろう。 ディミトリならかんたんに持ててしまうだろうがきっとフェリクスは渡さない。 ディミトリが片手を差し出すとまだ空いていた手がぎゅうと握られた。 「ありがとうございました!」 短剣を抱えたままにフェリクスが深々と頭を下げた。 よく見れば騎士の礼のようにも見える。 きっと真似してみたかったのだろう。 「これでお使い終了だな、急いで戻る」 「戻るのか?」 「ここで俺が後から戻ってきたら怪しむかもしれん」 「あの短剣お前には短いけどあれってさ」 フェリクスが短剣を受け取ったのを見るとグレンは踵を返した。 ここから城に戻るまで二人を見守るのがシルヴァンの役割だ。 まだまだ気は抜けない。 「あれは俺からフェリクスにあとでやるつもりだ」 「あ、やっぱり?」 ファーガスでは昔から贈り物に短剣を渡す習慣がある。 未来を切り開くという意味が込められているのだが同盟領はともかく帝国では縁を切るだのなんだの縁起が悪いものだと言われているらしい。 ファーガスは自分で運命を切り開いたからこそ存在しているからこその風習かもしれない。 もうフェリクスもディミトリも訓練用にもならないとはいえ木剣や槍で戦いごっこを始めているのだからそろそろ頃合いだろう。 性格的にいつもフェリクスが今の所勝ちを収めているがすぐにあのブレーダッドの血でディミトリが優勢になるだろう。 手加減して負けてやっているシルヴァンは弱いと思われているようだが。 「それではあとを頼む」 「はいよ」 グレンを見送るとシルヴァンは二人を眺める。 グレンとフェリクスは仲のいい兄弟だ。 見ていると幸せな気持ちになるが、自分と違いすぎて胸が痛くなることもある。 今自分がここにいるのも自領にいると危険だからだ。 もし、シルヴァンが兄マイクランから短剣を渡されたとしたらそれで刺すつもりかもしくは毒を塗っておいて後で毒殺するつもりかと思っただろう。 「………はぁ、うらやましいぜ」 にこにこと手を繋ぎながら城に戻る二人をその門が閉まるまでシルヴァンは見守った。 「あにうえ!ちちうえ!」 シルヴァンに後を任せてからずっと待っていた声が響いて扉が大きく開いてフェリクスがフラルダリウスの居室に飛び込んできた。 ロドリグがそれと同じかむしろ早いくらいにフェリクスを抱きかかえる。 「おかえり、フェリクス。 疲れたか?」 「ううん!」 「失礼する」 やはりフェリクスが手を振り払って走っていったのだろう。 遅れてディミトリも部屋に入ってきた。 「ああ、殿下。 倅の面倒を見ていただいてありがとうございました」 「いや、俺も勉強になった。 ああこれはロドリグに」 フェリクスを抱えたままロドリグが礼をとるとその手にブルゼンの入った袋を渡した。 「すみません、殿下に荷物持ちなんて」 「いや、力があるものが持つほうがいいだろう」 「ほら、フェリクス殿下におりてお礼を言いなさい」 ぎゅうとロドリグの胸に抱きついていたフェリクスが言われてずるずると降りてくる。 ほっぺたが赤いのは父親に甘えていたのを見られて恥ずかしいようだ。 「でぃみとり、ありがと」 降ろされたフェリクスは習いたての礼をとる。 たどたどしいのはまだ恥ずかしいのだろう。 「いや、どういたしまして。 そろそろ夕飯だろうしおれも戻るよ」 「うん、またね」 ディミトリもにこりと笑うと自分の居室へと戻っていった。 彼もきっと自分の父親にお使いのことを報告するのだろう。 触発されて殿下一人でお使いだなんてことにならなければいいが。 「フェリクス、短剣は?」 「あ!ごめんなさい!」 フェリクスは抱えたままの短剣のことをすっかり忘れてしまっていたようで慌ててグレンのもとに歩み寄って袋から取り出した布にくるまれた短剣を渡した。 「あにうえ!」 フェリクスがよたよたと渡したそれをグレンが受け取ってそのくるんでいた布を取り払った。 装飾にはフラルダリウスの紋章が彫られている。 色もよく身につける青だ。 「きれい…」 座ったグレンの膝にフェリクスは頭を置いてその短剣をうっとりと見つめている。 やはり武具が好きなところは血が争えない。 グレンはその短剣の柄を横に向けてフェリクスに差し出した。 「あにうえ?」 「これはお前のものだ。 お前が自分の力で未来を切り開けるように」 「おれの…?」 先程まで大事に抱えていた短剣を渡されてフェリクスは戸惑っているようだ。 確かにまだフェリクスには少し大きいがいつか必ずそれは役に立つはずだ。 「もらっていいの…?」 フェリクスは戸惑ったようにグレンとロドリグの顔を見ている。 ちゃんと先にロドリグには確認したし、実際その短剣はきちんとしたフラルダリウスに伝わるものだ。 「ああ、フェリクス、お前のものだ。 刃は潰していないから気をつけろ。 もしそれで怪我をしたのならその痛みがいつかお前が誰か傷つけたときにその相手が感じる痛みと同じだ」 今はまだ平和で戦いごっこなんてしているがいつかフェリクスが剣や槍を持って本当に命のやり取りをするかもしれない。 その時、紋章を持つものとしてその痛みがわからない人間になってほしくはない。 ずっと自分やロドリグが傍にいられるとも限らない。 グレンの話をフェリクスはじっと短剣を見つめながら聞いている。 大事な話なのだとわかったのだろう、暫くしてフェリクスは頷いた。 「…はい、あにうえ」 「よし、それが扱えるようになったら使うようにな」 グレンは神妙なフェリクスの髪をぐしゃぐしゃと掻き撫でた。 小難しい話はこれで終わりだ。 「今日はフェリクスがお使いに行ってくれたから俺も父上も助かったぞ、だからご褒美にフェリクスの好きなものを食べよう」 「やったー!!!」 既にもうフェリクスの好物のミートパイを用意するように厨には伝えていた。 もうしばらくすれば香ばしい匂いが漂ってきてフェリクスがお腹を鳴らすだろう。 来節今日のお使いの話をフェリクスがイングリットに話したがために今度はグレンがデートなるものに付き合わされることになるのだけれど。

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ファイアーエムブレム風花雪月、装備禁止、騎士団禁止素手縛り

風花雪月 フェリクス

ep13:ミルディン大橋の戦い ラファエルvsイグナーツ ep14:デアドラの戦い エーデルガルトvsリシテア マリアンヌvsヒルダ この記事を最初に公開したのは2019年9月なんですが、4ヶにやっと回収。 ホントにこの組み合わせは盲点でした。 バルタザールvsヒルダ 追加コンテンツ『煤闇の章』配信開始で新たに実現。 バルタザールvsリシテア 会話の内容からして、支援Bが必要……だと思う。 エーデルガルトvsナデル エーデルガルトvsクロード ep15:ガルグ=マク籠城戦 シャミアvsアロイス まずは シャミアが自軍の場合。 続いて、 アロイスが自軍の場合。 微妙に内容が違う。 ep16:アリアンロッド攻城戦 ここから戦闘会話のオンパレード。 シルヴァンvsイングリット フェリクスvsイングリット 自軍or敵軍で2パターンあり。 まずは イングリットが自軍の場合。 そして、 フェリクスが自軍の場合。 比べてみるとわかりますが、イングリットの変わりようが凄い。 ユーリスvsグェンダル vsグェンダルはアリル奇襲戦でも同じ。 ハピvsコルネリア コルネリアの台詞はありませんが、一応戦闘会話として入れておきます。 王都奪還戦でも同じ。 EP16の散策中にヒントっぽいものはあるようです。 ep17:タルティーン平原の戦い イングリットvsシルヴァン フェリクスvsシルヴァン フェリクスvsディミトリ 元青獅子の生徒で戦闘した場合でも、特殊な会話が発生。 (ディミトリが喋るだけ) 対フェリクスの場合、それに続けて追加会話あり。 ・アネットvsメルセデス フェルディアでのメルセデスvsアネットと同じ。 下で紹介。 イエリッツァvsメルセデス コンスタンツェvsメルセデス 煤闇配信で追加。 エーデルガルトvsディミトリ エーデルガルトvsレア ep18:フェルディアの戦い メルセデスvsアネット タルティーン平原での逆パターンも、全く同じ会話となっております。 アネットvsギルベルト シャミアvsカトリーヌ ep12ガルグ=マクの戦いでは会話シーンはなかったのですが、ここではしっかり入ってましたね。 ただちょっと残念なのは、「シャミアvsツィリルの戦闘会話がナシ」という点。 これはどうにかならなかったのか……? エーデルガルトvs白きもの うっかり抜けているものもあるかもしれませんが、ひとまずここまでです。 (意外な組合せに気が付いていない、なんてこともあるかも) 埋まっていない会話については、周回プレイしていく中で更新できればと思います。

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#FE風花雪月 #フェリクス はじめてのおつかい

風花雪月 フェリクス

得意:剣術、弓術、格闘術• 苦手:理学、指揮• 才能開花:理学 ・フェリクス 力と速さに長けるアタッカー。 青獅子のアッシュが弓兵としてはややパワー不足で、彼をスナイパーにしても良い。 格闘メインだと紋章効果を活かしやすい。 パワー面で悩む事はほぼありません。 特に序盤で役立つ他、格闘x2の破壊力も飛躍的に上がることでしょう。 能力傾向と紋章スペックのお陰で戦闘力は高めですが、騎士団を生かしにくいのが痛い。 引継ぎなしで高難度プレイをするとこの点がかなりストレスになります。 魅力が低いため攻撃系計略が使いにくく、敵の計略もあまり避けてくれない。 ウォーロックにしないと黒魔法の弾数が少なく、そもそも魔力値の伸びが悪い。 他の魔道士を採用した方がずっと優秀でしょう。 フェリクス育成 以上を踏まえ、フェリクスの育成について。 メイン武器 選択肢は剣・弓・格闘。 射程3での「曲射」は弓兵でなくても重宝しますし、隙を見てアーチャーの兵種マスターをしときましょう。 弓を少し育てておくことにより、アサシン合格もしやすくなります。 必殺を重視するならソードマスター、森や茂みが多いならアサシンと使い分けるのがお勧め。 グラップラーは「猛烈鉄拳」での戦闘がメインで、命中を補っておけば全弾Hitも狙いやすい。 騎士団 <鍛えたい能力>• (防御) 剣士系で回避を重視したいのであれば、やはり騎士団で回避を上げるべき。 指揮B到達すればゴーティエ騎士団などがお勧めです。 弓メインの育成であれば、回避無視して物攻・命中・必殺を上げればOK。 ヌーヴェル給仕隊・獅子王隊・王国親衛隊などが強いかと。 ルート別考察 ・蒼月 剣士としての育成を考えている場合、早いタイミングでを育てていっても良い。 弓兵としては以上の攻撃力を発揮。 しかし「囲いの矢」を持つベルナデッタの利便性には及ばない。 可もなく不可もなく。 紅花の場合、敵対する青獅子ユニットたちとの戦闘会話を回収できるという点でスカウトしてみるのもあり。 ・翠風 金鹿組には剣士向きユニットが少ないのでフェリクスが合う。 しかし「カトリーヌで良くね?」というのも否めない。 育成例 ルナティックということでスナイパー育成してますが、ハードまでであれば剣士・格闘兵もお勧めです。

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