ミリアのことが好きになった。 マクギリスって結局、アルミリアの事が好きだったんですか?やっぱり財力目...

自分のことを好きな人の頭文字がわかる恋愛診断【心理テスト】縁結び/片思い/両思い

ミリアのことが好きになった

第二の試練もこなした僕たち、 意 ( い ) 気 ( き ) 揚 ( よう ) 々 ( よう )と第三の試練を求めるが、その試練を用意する 治 ( ち ) 癒 ( ゆ )の女神はとんでもないことを口にした。 彼女に試練の内容を 尋 ( たず )ねると、僕たちにこう言う。 「あんたたち、私の目の前でチューをしなさい」 「…………」 「…………」 僕とルナマリアは思わず 沈 ( ちん ) 黙 ( もく )してしまうが、 一 ( いつ ) 瞬 ( しゆん )だけ早く気を取り直した僕が再び質問をする。 「……今、チューをしなさい、と聞こえたような気がするけど」 「聞き 間 ( ま ) 違 ( ちが )いじゃないわよ。 チューをするの」 「さっきは僕とルナマリアがそういう関係になるのを 拒 ( こば )んでいたような」 「もちろん、今も拒んでいるわよ。 あ、そこの 小 ( こ ) 娘 ( むすめ )、うちのウィルちゃんとキスしたくらいで正妻を気取ったら許さないからね」 びしっと指を突きつけるミリア。 ルナマリアはなんとも言えない顔をしている。 「まあ、でもふたりが 出 ( で ) 逢 ( あ )ってしまって、旅に出るのは事実。 しかもウィルの初めてのガールフレンドなんだし、キスまでは許しましょう。 本当は 厭 ( いや )だけど、どうせ 陰 ( かげ )でぶちゅっとするなら、ファーストキスは目の前で見たい。 ううん、《転写》の魔法で絵にして取っておきたい」 と言うとミリアは、キスシーンを 撮 ( と )る気満々になる。 なんでもロマンチックな一枚が撮れればふたりの仲を認めてくれるらしいが、当然、僕は 拒 ( きよ ) 否 ( ひ )する。 「いくら母さんでもそんなことを試練にする権利はないよ。 断固拒否する」 「あら、外の世界に行きたくないの」 「行きたいけど、その試練は駄目」 ルナマリアも厭だよね? と尋ねると、彼女は、「厭ではないかも……それで試練を果たせるならば楽ですし……」と 頰 ( ほお )を染めた。 その姿を見てミリアはニヤニヤとする。 いけない。 このままだとなし崩し的にキスをさせられる、そう思った僕は逆に提案をする。 「ミリア母さんは僕とルナマリアの 絆 ( きずな )を見たいんだよね? これから 一 ( いつ ) 緒 ( しよ )に旅を続けられるか調べたいんだよね?」 「まあ、 有 ( あ )り 体 ( てい )に言えば」 「ならばちゃんとした試練を用意してよ。 ふたりが今後、協力していけるか計れるような」 「むう、 超 ( ちよう )正論ね」 さすがのミリアも聞く耳を持ってくれるというか。 キスだけで旅立たせるのはどうかと思ったのだろう。 てゆうか、僕は確実に反対すると思っていたようだが、ルナマリアが乗り気なのが計算外だったようだ。 そうなると 天 ( あまの ) 邪 ( じや ) 鬼 ( く )として別の試練にしたくなるのがミリアだった。 ミリアは 腕 ( うで )を組むと、しばし目を閉じ、考え始める。 しばらく考え込むと、ミリアは言った。 「分かったわ。 じゃあ、ふたりで一緒に薬草を採ってきて」 「薬草?」 「そうなの。 実は最近、お 化 ( け ) 粧 ( しよう )ののりが悪くてね。 徹 ( てつ ) 夜 ( や )のしすぎで 肌 ( はだ )が 荒 ( あ )れているの。 だからお肌に良い薬草を採ってきてほしいの」 「それならお安い 御 ( ご ) 用 ( よう )だけど、楽すぎない?」 「そんなことないわよ。 ふたりに行ってもらうのは 竜 ( りゆう )の穴だから」 「竜の穴!」 僕は声を上げるが、その単語でルナマリアも 不 ( ふ ) 吉 ( きつ )なものだと 悟 ( さと )ったようだ。 「竜の穴とは竜が住む穴なのですか?」 「そうだよ。 テーブル・マウンテンの北にあるんだけど、危険だから森の動物も近寄らないんだ」 「そんなところにある薬草を採ってくるのですね」 「しかも母さんの美容のためにね」 ため息を漏らすが、断るつもりはない。 たしかにあの穴をふたりで 冒 ( ぼう ) 険 ( けん )できるのならば、外の世界でも通用すると認めてもらえるだろう。 「分かった。 今からその薬草を採りに行くけどなにか注意点はある?」 「 聖 ( せい ) 蘭 ( らん )草はこの時季、あまり 咲 ( さ )いてない貴重な花なの。 竜の息で焼かれないようにしてね」 「分かった」 「竜の穴は一〇階層まであるけど、花が咲いているのは第三階層と第一〇階層だけよ」 「なるほど、他に注意点は?」 「期限は明日の正午まで」 空を見上げる。 もう夕刻だった。 「分かった。 じゃあ、今から 出 ( で ) 掛 ( か )けるね」 とミリアに背を向けるが、ミリアはハンカチを持ったか、忘れ物はないか聞いてくる。 まるで子供 扱 ( あつか )いであるが、いつものことなので気にせずすべてを持ったことを伝えるとそのままルナマリアと北へ向かった。 かなりの速度で歩く。 あっという間に神々の住まいを出立すると、僕たちは竜の穴に向かった。 ウィルたちがいなくなると、 剣 ( けん ) 神 ( しん )であるローニンが治癒の女神ミリアに話しかけてくる。 「ミリアよ、お前、ウィルを旅立たせる気あったのな」 「なにそれ? どういう意味?」 「いや、だってお前の用意した試練は楽勝だっただろう」 「キスはウィルが拒むと思っていたわ。 本当はキスを拒んだことを口実に落第にしようとしたのだけどね。 あの 泥 ( どろ ) 棒 ( ぼう ) 猫 ( ねこ )が乗り気だったのが計算外だったわ」 「いや、そうじゃなく、竜の穴のほうだ。 あれはウィルならば楽勝だろ」 「そうね。 ウィルならば簡単に手に入れるはず。 安全に、 迅 ( じん ) 速 ( そく )に」 「なら試練はこなしたも同然じゃないか」 「私の試練は聖蘭草を私のもとへ持ってくることよ」 「手に入れればすぐ帰ってくるだろう」 「そうかしら、うふふ」 ミリアは 怪 ( あや )しく 微笑 ( ほほえ )む。 なにやら 悪 ( わる ) 巧 ( だく )みをしているようである。 この女神は昔から悪巧みが得意であったし、そもそも今回の旅に一番反対なのは彼女なのだ。 ミリアは幼き 頃 ( ころ )からウィルを猫 可愛 ( かわい )がりしているし、一番、ウィルを手元に置きたがっている。 女親ゆえに仕方ないところもあるが、ウィルが可愛くて仕方ないようだ。 その点、ローニンとヴァンダルは男の子はいつか旅に出るもの、という共通認識があった。 あまりそりが合わない女神であるが、今回ばかりは彼女の 悪 ( わる ) 知 ( ぢ ) 恵 ( え )に期待を寄せている。 男の子はいつか旅立つものだが、ウィルにはまだ早いと思っていたし、その時期は 遅 ( おそ )ければ遅いほどいいと思っていた。 あと数年は一緒に剣を 振 ( ふ )り、 岩 ( いわ ) 風 ( ぶ ) 呂 ( ろ )に 浸 ( つ )かりながら星を 眺 ( なが )めたかった。 それが剣神と 謳 ( うた )われたローニンの 偽 ( いつわ )らざる心境であった。 そこでテントを張り、一夜を明かすのだ。 朝になったら竜の穴に飛び込むが、それまでに英気を養う。 「竜は夜行性だからね。 今、飛び込めばこちらが不利だ。 じっくり 身体 ( からだ )を休めて万全の体調で 挑 ( いど )みたい」 僕はそう言うと 抱 ( かか )えていた 鍋 ( なべ )に水を張る。 塩 ( しお ) 漬 ( づ )けのベーコンをカットして入れ、だしを取る。 鍋に家から持ってきた野菜を入れる。 それをコトコトと 煮 ( に ) 込 ( こ )むと良い 匂 ( にお )いがしてくる。 ルナマリアは、 「ウィル様は料理がお上手ですね」 と 褒 ( ほ )めてくれる。 「そうかな」 「お上手ですよ。 ベーコンと野菜を切る 手 ( て ) 際 ( ぎわ )がいいです。 トントンとリズミカルです。 これは手慣れている 証 ( しよう ) 拠 ( こ )」 「山では当番制で料理をするからね。 昔は母さんと父さんが順番に作っていたけど、最近は僕もローテーションの一角なんだ。 ミリア母さんよりも 上手 ( うま )いよ。 包丁さばきだけは」 「ミリア女神様ですね。 最初、キスをしなさいと言われたときは 驚 ( おどろ )きました」 「たぶん、母さんの 冗 ( じよう ) 談 ( だん )だとは思うけど」 もしも 即 ( そく ) 答 ( とう )でOKし、キスをしてたらどうなったのだろう、とルナマリアの 唇 ( くちびる )を見てしまう。 桜色に染まった彼女の唇はとても 柔 ( やわ )らかそうだった。 思わず頰を染めてしまう。 彼女に光がないのは幸いだった。 僕は素数を数えると努めて冷静になる。 「……そ、そういえばルナマリアは料理はするの?」 「はい。 巫 ( み ) 女 ( こ )は自分ですべてをこなさなければなりませんから」 「包丁で指を切ったりしない?」 「目が見えない分、 慎 ( しん ) 重 ( ちよう )になるのでそれはないです」 「良かった。 じゃあ、旅をしていればそのうちルナマリアにも作ってもらえるね」 「お口に合うかは分かりませんが。 当番制にしよう」 「私はウィル様の従者です。 身の回りのことをするのがお仕事です。 以後、メイドのようにお使いください」 と言うと彼女は木の皿にベーコンと野菜のスープをよそい、それを僕に 渡 ( わた )す。 とても器用で目が見えないようには思えない。 僕はスープを受け取ると彼女に 尋 ( たず )ねる。 幼き頃、地母神に仕えるために、私は光を失いました。 目が見えなくなる 霊 ( れい ) 薬 ( やく )を飲んだのです」 「なぜ、そんなことを?」 「地母神に仕えるためです」 「生まれたときから巫女だったの?」 彼女は首を横に振る。 「いえ、私は貧農の生まれです。 五人兄弟の 末 ( すえ ) 娘 ( むすめ )だったのですが、両親が 流行 ( はやり ) 病 ( やまい )で死んでしまったため、 神 ( しん ) 殿 ( でん )に引き取られました。 そこで巫女の適性があると分かり、巫女になったのです」 「じゃあ、半分強制じゃないか」 「そんなことはありません。 宿命ですね。 巫女になる前日、神の声を聞きました」 「神の声?」 「はい。 私が巫女になること。 そしてその一〇年後、身命を 捧 ( ささ )げるべき勇者様と出会うことを告げられました。 その 神 ( しん ) 託 ( たく )はすべて実現しています」 にこりと微笑むルナマリア。 悲 ( ひ ) 壮 ( そう )感はない。 彼女にとって巫女としての使命を果たすのは息をするのと同義なのかもしれない。 そう思った僕はそれ以上、なにも言わなかった。 彼女がよそってくれたスープを平らげると、その後、木の歯ブラシで 一 ( いつ ) 緒 ( しよ )に 歯 ( は ) 磨 ( みが )きをし、毛布にくるまった。 眠 ( ねむ )る 瞬 ( しゆん ) 間 ( かん )、彼女は言う。 「神の予言を聞いた瞬間、神の 吐 ( と ) 息 ( いき )を感じた瞬間、とても幸せな気持ちに包まれました。 勇者様と 焚 ( た )き火の前で 寝 ( ね )るのはとても心地よい。 大きな存在に 護 ( まも )られているかのような安心感を覚えます」 彼女はそう言うと早々に寝息を立てた。 一方、僕はというと 隣 ( となり )に女性がいるという 状 ( じよう ) 況 ( きよう )に 戸 ( と ) 惑 ( まど )っていた。 ミリアなどが 裸 ( はだか )で僕のベッドに入ってきてもなにも感じなかったが、ルナマリアが横にいると思うとなかなか眠りにつけない。 僕は眠るためにルナマリアから視線を遠ざけると、 狼 ( おおかみ )の数を数える。 四三 匹 ( びき )目の狼で 睡 ( すい ) 魔 ( ま )がやってきてくれたが、その後、眠るのにさらに一〇〇匹近く数える。 なぜならば四四匹目と四五匹目の狼がシュルツとヴァイスという 雄 ( おす )と 雌 ( めす )の狼だったからだ。 夫婦の姿をした彼らはとても仲良しだった。 再びルナマリアを意識してしまった僕は、なんとか彼女を振り 払 ( はら )うと、根性で眠ることに成功した。 『公女殿下の家庭教師』を手がける七野りく先生による、新たな育成ストーリーの登場です! 物語の舞台は、若い冒険者が集まる辺境都市ユキハナ。 主人公のレベッカは頭打ちを感じ、伸び悩んでいました。 そんな時に彼女が出会ったのが【育成者】を自称するハル。 外見はメガネをかけていて身体も細身とあまり強そうな感じはしませんが、大陸全土に名を馳せる数々の冒険者を育ててきた実績の持ち主なんです。 彼があるアイテム作りのための素材を探していると口にすれば、龍や悪魔を討伐しなければ手に入らない入手困難なものでも簡単に送られてきますし、有事の際には彼がお願いするだけで国内最強メンバーが直々に出動したりするんです。 優れた弟子達が世界各地で大活躍しているので、世界中に影響力を持つ超重要人物になっています! 弟子だけではなく彼自身もペーパーナイフで剣を断ち切ったり、歴史上で数例しか確認されていない技術をあっさり使いこなしたりと、とっても凄い人物なんですよ。 見た目は若いのになぜ弟子がいっぱいいるのか... 色々と謎も多いのですが、そこもまた魅力的ですね。 レベッカの才能を見抜いたハルが彼女を一人前に育てるというのが本作のメインストーリーでこの育成部分だけでも面白いのですが、それだけに留まらず後半で描かれる彼とその弟子たちによる規格外のバトルはとっても痛快です。 彼と彼の弟子たちが今後世界にどのような伝説を刻んでいくのか、先が非常に気になりますよ! ヒロインの白金小雪ちゃんは、男の子だろうと女の子だろうと近づく人には毒舌を飛ばす、「猛毒の白雪姫」なんて呼ばれてる女の子。 でも、そんな直哉くんの前だからこそ「猛毒の白雪姫」小雪ちゃんも、臆病な本心を素直にさらけ出せるんですよね! 本心には本心で答えなきゃですよ! 自分の気持ちをうまく表せない女の子と、女の子の気持ちにぐいぐいツッコんじゃう男の子、がっちりかみ合ってお似合いなふたりを眺めてると、なんだかニマニマして幸せな気持ちになっちゃいましたよ~! お互い想ってる同士なのに、いつも甘~くすれ違っちゃう先輩と後輩にたまらなくニヤニヤしちゃう青春ラブコメ! ラブコメのヒット作、「乃木坂シリーズ」の五十嵐雄策先生の新作だよ! 大好きな花梨先輩に喜んでもらいたい、って思う主人公の龍之介くんの目標は、一日三回、先輩を喜ばせてあげること。 いつもまっすぐに先輩を想う龍之介くんは、すごく一途で素敵な男の子なんだけど、彼のそんな想いは、花梨先輩を喜ばせるというより、大体へにゃへにゃになるまで照れさせちゃってるんだよね。 花梨先輩も、龍之介くんの前では先輩らしくふるまいたいって思ってるから、龍之介くんに照れておかしくなっちゃう回数を抑えようと頑張ってるんだ。 お互いに相手を大事に想ってるのは確かだけど、なんでかふたりのやることは絶妙なところでかみ合ってなくて……うぅ~、甘酸っぱくていいなぁ、こういう両片想い的な関係! 龍之介くんと花梨先輩のような毎日が日常だったら、いつもドキドキしちゃって楽しいだろうなぁ~!.

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自分のことを好きな人の頭文字がわかる恋愛診断【心理テスト】縁結び/片思い/両思い

ミリアのことが好きになった

放課後、ジョセフは全てをアルフォンスに託してサロンの星の間にいた。 移動中にサロンを利用する生徒に出くわさないよう、配慮した部屋を選んだ。 ミリアのために用意したケーキは十種類。 小さく切って出すように言ってある。 紅茶は甘いクリームに舌が負けないよう、香りがさわやかで少し渋みのあるものにした。 髪をセットし直し、服装も少し変えた。 できることなら正装したいところだったが、 大仰 ( おおぎょう )にするとミリアは嫌がるだろう。 ジョセフを見た途端に逃げ出しかねない。 まずは謝罪だ。 アルフォンスからミリアは嫌ではなかったと聞いて舞い上がってしまったが、本心ではないのかもしれないし、ジョセフを許すかどうかは別の話だ。 ミリアならすぐに許してくれそうでもあったし、逆に何をしても梨の 礫 ( つぶて )になりそうでもあった。 アルフォンスはとっくにミリアに伝えてくれたはずだ。 今日は来てくれないのだろうか。 それとも金輪際近づくなと返されただろうか。 アルフォンスと一緒でいいから来て欲しい。 せめて謝罪だけはしたい。 中央のテーブルで 悶々 ( もんもん )としていると、ノックの音と共にミリアの到着が告げられ、外から扉が開いた。 ジョセフは反射的に立ち上がった。 感嘆を上げたミリアが部屋の内装を見回しながら入ってくる。 アルフォンスはいない。 一人で来てくれた。 「ミリア嬢……」 「ジョセフ様、お招きありがとうございます」 たまらず名を呼ぶと、ミリアはアルフォンス監修の見事な礼を見せた。 普段通りの笑顔にほっとするのも 束 ( つか )の間、案内をした使用人が入室せずに扉を閉めると、ミリアの動きが止まった。 ジョセフが迎えようと足を踏み出すのに合わせ、強張った顔で後ずさってしまう。 使用人を下がらせるのではなかった、と後悔した。 ミリアは人を使うことに慣れていないから、二人での茶会を受けてくれたのなら居ない方が気が楽かと思ったのだ。 だが、何もしない、と告げると、驚いただけだ、と言ってミリアはジョセフの前まで歩いてきた。 怯 ( おび )えている様子はない。 目の前に来たときに、ジョセフは深く頭を下げた。 「申し訳なかった! 先日、ミリア嬢に働いた無礼をどうか許してほしい。 もう二度とミリア嬢の許しなしに触れたりしないと誓う」 「私、一度だけって言いましたよね」 冷ややかな声だ。 入室したときの明るさとは大違いだった。 肩を組み、許しをもらったときに、確かにミリアは今回だけと言っていた。 「……申し訳ない!」 はあ、とミリアがため息をついた。 目の前が真っ暗に染まっていく。 ミリアのドレスの 裾 ( すそ )の色がわからなくなってきた。 許してもらえないことは覚悟していたはずなのに、拒絶の言葉を聞くのがこんなにも怖い。 拳 ( こぶし )を握りしめ、長い沈黙に耐えた。 「ジョセフ様、頭を上げて下さい。 許すも何も、私怒ってはいないです」 「そんなわけには……!」 ミリアの声が幾分か軟らかくなった。 しかし、言葉通りに受け取るわけにはいかない。 怒りの感情がないわけがないのだから。 「じゃあ、代わりに何か美味しいものを食べさせて下さい。 そうですね……ピアミルキのクッキーを全種類。 それで許してあげます」 「本当に!?」 ジョセフはがばっと体を起こした。 ミリアが物をねだるのは非常に珍しい。 詫びの品にお菓子を指定されたのなら、それは本当に許す気があるということだろう。 「はい。 三十種類はありますよ」 「店ごと贈るよ」 「いや、それはちょっと……。 一枚ずつでいいですから」 「わかった」 笑いを含んだ声で言われて気が抜けた。 クッキーの三十種類がなんだというのだ。 その程度ではジョセフの気が済まなかった。 店を丸ごと買って、ミリアの好きなときに好きな味を好きなだけ作らせるくらいのことはしたかった。 だが、困り顔で断られ、ミリアがその気になればスタイン商会の財力を持って系列店に加え、会長の娘権限で同じことができるな、と考えて思い直した。 しかし、あの仕打ちに対してクッキー三十枚……あまりにもチョロ……寛容すぎないだろうか。 平民の感覚で言えばわからなくはないが……。 ジョセフはミリアの貞操観念が心配になり、自分が守らねばと決意を新たにする。 ミリアは、ジョセフの行動そのものよりも、それによって引き起こされたエドワードの暴走と噂の方が迷惑だと言った。 ここまでくるとミリアも流言の中身を気にしているらしい。 「私が……その、ジョセフ様をたぶらかした……なんて言われてて!」 たぶらかした、という言い方は正しくない。 結果的にミリアに恋に落ちたことには変わりないが、ミリアから仕掛けたのか、ジョセフが勝手に好きになったのかは大きく異なる。 その違いは、ミリアにその気がなかったということを表していた。 その後に続いたミリアの言葉が、今もなおその気が全くないことをジョセフに突きつけた。 「ちゃんとマリアンヌ様と仲良くしててくれないと。 マリアンヌ様、ショックで寝込んでるって言うじゃないですか。 マリアンヌ様には許してもらったんですよね? 婚約者なんだから大事にしてあげて下さい」 好きな女性に他の女性との関係を心配され、良好に保てと叱られるなど、これほど情けなく悲しいことがあるだろうか。 「ミリア嬢……もう一つ、聞いてもらいたいことがあるんだ」 「何です? 私、マリアンヌ様の好きな物なんて聞かれても答えられないですよ。 聞くならローズ様かリリエント様でしょう。 お菓子を贈るつもりなら、多少は相談に乗れるかもしれませんが……それでも最新情報なら侍女さんたちの方が詳しいと思います」 真剣に切り出したつもりなのだが、またも 他の女性 ( マリアンヌ )のことを持ち出された。 ジョセフのことを考えてくれている優しさは嬉しいが、無邪気さは罪だ。 「違う」 首を振ってミリアに一歩近づく。 「手に触れても?」 許しなく触れないと誓ったので、許可を求めた。 距離を詰められて上半身を引いたミリアは、思わず、といったように 頷 ( うなず )いた。 ジョセフはミリアの片手を取り、ひざまずいた。 「ちょ、ちょっと、何なんですか、急に!」 ミリアのピンク色の目を見つめた。 驚きで瞳が揺れていた。 ミリアの手は温かく、緊張で冷たくなったジョセフの手にじんわりと体温が移ってくる。 この小さな手を守りたい。 できれば自分の手で。 ジョセフは言葉を区切り、はっきりと告げた。 「ミリア嬢、好きだ。 交際を申し込みたい」 ミリアはきょとんとした顔をした。 すぐにジョセフの言葉の意味が浸透したのか、目を大きく開けて息を吸う。 「ジョセフ様!? 何を言って……」 驚いた声は、しかしすぐに尻すぼみになる。 上がっていた 目蓋 ( まぶた )が下り、半眼になった目がジョセフを見下ろした。 「マリアンヌ様はどうするおつもりですか?」 視線に怒気と軽蔑が含まれている。 ミリアの体からゆらりと冷気が立ち上っているように思えた。 未だかつてないほどに激怒しているのがわかった。 これがジョセフの 抱擁 ( ほうよう )に向けられたものでなかったことに心の底から感謝した。 「マリアンヌとの婚約は解消した」 声が震えないように注意して、ゆっくりと発声した。 これでミリアの怒りは収まるはずだ。 「嘘でしょう!?」 ミリアは再び大きくした目でぱちぱちと瞬きをして、一拍置いてから叫んだ。 怒気が霧散したのがわかった。 「本当だ。 両家の了承のもと、正式に解消した」 「何やってるんですか! なんでそんなことっ!」 「ミリア嬢が好きだからだ。 マリアンヌとは婚約を続けられない」 「そんな簡単に! 貴族ですよね!? 好きとか嫌いとかじゃないじゃないですか! それに、マリアンヌ様にひどいと思わないんですか!? 相手が男爵家だからって、そんな横暴許されるわけないでしょう!?」 「わかっている!」 「わかってない!」 仕方ないだろう。 だってミリアが好きなのだ。 こうしなければ本気だとわかってもらえない。 愛を告白した本人に 詰 ( なじ )られることがつらかった。 「ごめんなさい……」 「いや、いいんだ。 突然こんなこと言ってごめん。 でも俺は、本当にミリア嬢のことが好きなんだ。 できることなら結婚を申し込みたい。 だけどミリア嬢は急には考えられないだろ? だから、俺という人間をもっと知って欲しい。 そのために、ミリア嬢の隣にいる権利をくれないか」 急すぎることはわかっている。 マリアンヌと婚約を解消した後、時間を置いてから告白できればよかった。 だが卒業まで残り五ヶ月を切っている。 悠長なことは言っていられない。 なによりこの想いを抱えてはいられなかった。 ミリアに伝えたかったのだ。 本気だとわかってもらうためなら何度でも言う。 ミリアの顔がくもった。 困惑と焦燥となぜか後悔が見て取れる。 狼狽 ( うろた )える視線をさまよわせ、唇をかんでいた。 そんな顔をしないで欲しい。 困らせたかったわけではない。 それともギルバートのことを考えているのだろうか。 自分に意識を戻して欲しくて、ジョセフはつかんだままのミリアの指先に軽く口づけを落とした。 唇が触れた瞬間に、ミリアがばっと手を引いた。 エドワードには長く許したのに、自分は拒絶されたことにわずかに胸が痛んだ。 ミリアの顔が真っ赤になった。 怒らせた、と思っても遅かった。 キスを落とすのは触れる許可に含まれていなかったに違いない。 誓ったそばからこれだ。 自分は最低のクズ野郎だ。 ジョセフはミリアに逃げられた手を胸に握り込んだ。 謝罪を口にしようとしたが、ミリアの様子がおかしかった。 きゅっと口を引き結び、下がった眉の下で涙で濡れたように目が 潤 ( うる )んでいる。 その表情にぐっときた。 ぐわっと頭に血が上る。 抱きしめたい。 立ち上がり、思わずミリアに手を伸ばすと、ミリアが一歩逃げた。 濡れた目でジョセフを見上げ、いやいやをするように首を緩く振っている。 その仕草にさらに 煽 ( あお )られたが、ジョセフは目をつぶり、体に力を入れて衝動を抑えた。 これ以上愚行を重ねるわけにはいかない。 許可だ。 許可が必要だ。 「ミリア嬢、その……抱き締めても?」 「っ、ダメですっ!」 即行で却下された。 当たり前だ。 何を馬鹿なことを言っているのだと、頭をかきむしって自分を罵倒してやりたかった。 「まだ返事ももらっていないのにごめん。 ミリア嬢が、あまりにもかわいくて……」 情けない言い訳だった。 仕切り直すようにミリアの目を見る。 「返事をもらいたい。 俺の、恋人になってくれないだろうか?」 「……ごめんなさい」 ミリアがちょこんと頭を下げた。 正直、はっきりと断られてほっとした。 想定内だ。 今のミリアはジョセフのことを好きではない。 ギルバートだっているのだ。 これで意識してもらえれば 御 ( おん )の 字 ( じ )だった。 時間がある限り諦めるつもりはない。 「エドの事が好きなのか?」 「それはありません」 いきなりギルバートのことを聞くには勇気が足りず、まずは乳母兄弟を持ち出した。 食い気味の返答だった。 哀 ( あわ )れ、エドワード。 「なら、他に好きな人がいる?」 「いませんけど……」 よっしゃーっ! と心の中で叫んだ。 ギルバートのことはまたジョセフの早合点だったのかもしれない。 香りの謎はあるが、想い人がいないという返答を信じよう。 ああ、今すぐミリアの首に顔を 埋 ( うず )めて香りの有無を確かめたい。 もちろんそんな心の内は顔にはおくびにも出さない。 攻める。 攻めるしかない。 ミリアの顔色をうかがいながら、落とし所を探っていく。 ミリアの寛容さに付け入るのは気が引けるが、ここは押すところだ。 「試しに……というのは、ミリア嬢に対して失礼か」 「……そうですね」 「ミリア嬢は、俺のことを嫌っているわけではないんだよな?」 「まあ」 「なら、俺にもまだチャンスはあるわけだ」 「……」 無言で困った顔を向けられる。 可能性は低いことを示しているが、裏返せば、なくはないということでもある。 好感度どん底からの再スタートかと思いきや、ジョセフは思っていた以上にミリアに良く思われているらしい。 「ミリア、と呼んでもいいだろうか。 俺のことはジェフと呼んでくれると嬉しい」 「だめです。 私も呼びません」 ギルバートには許していたから行けるかと思ったが、拒否された。 やはりギルバートは 恋人 ( 特別 )なのか。 大切な友人とやらの差か。 しかし、その理由は目立ちたくないからだとミリアが説明した。 呼び捨てと愛称はよっぽど親しくなければ許されないが、嫌だとか、そこまで親しくないという理由でないことに内心 喝采 ( かっさい )を上げた。 「二人きりの時はミリアと呼んでも?」 「まあ……二人のときだけなら。 人前でうっかり言ったりしないで下さいね」 「ミリアもジェフって呼んで欲しい」 「そのとき覚えていれば」 許可が出た。 元平民 故 ( ゆえ )の気軽さだろうが、笑顔が緩みすぎないよう、ほどよく引き締めるのに苦労する。 アルフォンスに気持ち悪いと言われた顔をミリアにさらすわけにはいかない。 自分ではだらしなくとも気持ち悪くはないと思うのだが。 いや、だらしない顔もさらせない。 ミリアは嫌なそぶりを見せない。 このまま平民の友人に許されるところまでは押し切りたい。 「口調も変えて」 「……要求が多すぎませんか?」 「まずは友達からっていう言葉があるんだろ? よろしく、ミリア」 ジョセフは握手をするように手を差し出した。 「私、気持ちに 応 ( こた )えられるかわかりませんよ」 「わからないってだけで十分」 にこりと笑うと、ミリアは面倒くさそうにジョセフを見て、弟をなだめる姉のような顔をした。 「……ああ、もうっ! 友達ですよ?」 「よろしく、ミリア」 「よろしくね、ジェフ」 ミリアの小さな手はしっかりとジョセフの手を握った。 ジェフ、と呼ばれたジョセフが 身悶 ( みもだえ )えを耐えていることなど知らずに。 その後始まった茶会は大成功だった。 量より種類を優先したデザートにミリアは大満足してくれた。 特に美味しかった三つを聞き出し、今後の参考とする。 エドワードのように手当たり次第に与えればいいというものではない。 くだけた口調で話すミリアはいつもより楽しそうだった。 平民の価値観がわかるジョセフとは話が合う。 女性は話の途中でころころと話題を変えるものだが、ジョセフは慣れていたし、ミリアのそれについていくのは楽しかった。 謝罪を受け入れてもらっただけでなく、友人の地位まで確立してしまった。 想定外の成果だ。 ミリアは押しに弱そうだ。 このままジョセフの想いをぶつけ続け、押して押して押す。 友人という地位を可能な限り活用して、ミリアの心を傾かせる。 頬 ( ほほ )を染めてはにかんだミリアが、ジェフ、と呼ぶのを想像して、ジョセフは体を熱くした。

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当ブログ「カミリアのーと」について

ミリアのことが好きになった

野々田さん、ご感想ありがとうございました! ミリアちゃんは、多くの作者の先輩方のキャラクターを参考してから、自分なりに加味した、自慢の主人公です。 そんな人間らしいところが、ミリアちゃんの一番の魅力だとわたしは思います。 そんなミリアちゃんが好きになってくれて、ありがとうございました。 これからも色々と大変なことはあるかもしれませんけど、二人はきっと一歩一歩と幸せになります。 この作者が辞書を片手に書いた作品を最後まで読んでくれて、ありがとうございました。 次の作品もこれからの作品もよろしくお願いします! ケイさん、ツッコミありがとうございました! 物書きは、読者様のツッコミの中で成長していく生き物ですから。 気になった箇所についてですが、 ・キリスト教の聖人皇帝として知られているコンスタンティヌス1世も異教徒の家庭で育てられたのですから、案外人間、というより子供というのは与えられた環境の限界以上に育つものではないでしょうか ・第二と第三の点については、他の読者様のご感想にも返信させていましたように、ヒロインちゃんのあの言葉は侯爵令嬢を貶すというより、国王に対する皮肉です。 いくら侯爵令嬢の貢献が凄いとは言え、彼女がそれを為せたのは平民を含め多くの人が力を合わせてやり遂げたものですから。 この物語の時代設定なら答えがイエスになるかもしれませんが、ヒロインちゃんのあのコメントはそれに対して疑問を挙げたものです……と少なくともわたしはこういう風に見せたかったのですが、もっと明白にするべきでした。 ・そうですね、寧ろヒロインちゃんは屁理屈上等みたいなノリで挑んでいました。 相手は屁理屈を言ったことがあっても屁理屈を言われたことがない高貴なお嬢様ですから 長文になってすみませんでした。 でも本当に読者様から頂いたご感想のおかげで、話作りに精進できるところをたくさん見つけました。 ありがとうございました。 次回作もよろしくお願いします!.

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