背中に生えた翼は君とともになくした。 ドラマ「リップスティック」名セリフ

Kanon

背中に生えた翼は君とともになくした

天使舞う空、駆け抜ける鉄騎 転機 スタッフがわらわらと動き出し、カメラマンが相棒たるテレビカメラから身体を離す。 OBCナイトニュースのスタッフたちの挨拶に手を挙げて答えながら、レベッカはスタジオの外へと向かう。 ここのところ、報じるニュースはエメリア軍の快進撃のニュースばかり。 エストバキアの言う「残党勢力」は、迎え撃ったエストバキア軍に牙を突き立て、食い破った。 オルタラ市上陸から始まったエメリア軍の進撃はまさに破竹の勢いと言うに相応しい。 オルタラ一帯を確保したエメリア軍は、周囲のエストバキア軍を駆逐しながら勢力圏を拡大。 別働隊はエストバキア軍の空白地域となった北西部一帯の解放を進め、ノルデンナヴィクとの国境本面まで解放区の拡大に成功した。 そしてさらに、エメリア残存軍最大の篭城拠点となっていたシルワート市では、エストバキアの大軍に一時は全滅の危機まで追い詰められた篭城軍が、逆に包囲軍に致命的な打撃を与えることに成功したのだ。 この大逆転劇においては、グレースメリアからケセドまで追いやられ、そこから数々の戦いを生き延びてきた航空部隊が大活躍したのだという。 エストバキア軍の兵士たちの間では、「鳥のエンブレム」を付けた戦闘機が、最も恨みを買っているらしい。 鳥のエンブレム。 全く、いい歳をして、派手好きな性格は結局治っていないんだから。 愛する良人の操る戦闘機の姿が、レベッカの瞼に浮かぶ。 辿り着いた休憩室はビルのちょうど縁に作られていて、首都の街並を一望する事ができる。 ここから眺める夜景はちょっとした展望台よりも良いと評判で、シーズンになると社内恋愛組で賑わうこともある。 だがこの時間、まだまだ社内は通常営業中らしく、休憩室の中の人はまばらだった。 もっとも、その方がレベッカにとってはありがたかったが。 手近の自動販売機でコーラを購入して、休憩室のソファの一つに背中を預ける。 肥満とは全く無縁の体質を誇る彼女にとっては、一仕事終えた後の一服にコーラは欠かせないのだった。 半分くらいを流し込んでテーブルの上に置き、それから伸びをして体の凝りをほぐしていたレベッカに、不意に横合いから声がかけられた。 「おや、ボールペン折りの達人もこれから休憩か?お疲れさん」 誰がボールペン折りの達人か、と言い返そうとして、慌てて言葉を飲み込む。 こちらの反応を楽しむように微笑を浮かべていたのは、ブレット・トンプソン報道局長その人だったのだから。 2005年に放映された特別番組「エースの翼跡 〜現代を生きるエースたちの記録〜」の立役者であり、2010年に発生した環太平洋事変では、オーシア・タイムズの不屈の記者たちと共に戦争の真実を暴いた、今やOBC局内の生ける伝説となりつつある男。 あくまで現場に在り続けることを貫こうとするその姿勢は、局内の記者たちの理想の目標ともなっている。 「人が悪いですね、局長も。 あんな簡単に折れる安物のボールペンが悪いんですよ」 「そうかい?局内の人間で指で折れた奴は一人もいなかったんだがね。 両手でなら何人かは折れたけど……そのうち、折り方教室でもコーナー作って見るか。 それはそれで、インパクトがあって面白いかもしれない」 「勘弁して下さい。 あれはその……昔の癖です」 とはいえ、「ボールペン折り」が一部では話題になっていることをレベッカも耳にしている。 今日の番組の中で折るか折らないか、それを楽しみにしている視聴者もいるのだという。 さすがにやり過ぎているかしら、とレベッカも思わなくもない。 とはいえ、昔の「地」が出るくらいなら、サクッと1本の損害で済んだ方が局としてもいいに違いない。 さすがにプロとして、「地」を出した事は勿論無いが。 「……ところで、そろそろ旦那さんの事が心配なんじゃないか?」 「いいえ、全く、あの無節操な下半身は死んでも直りませんから。 どうせ今頃、エストバキア相手でもピンピンしてるに決まってますわ」 「やれやれ、素直じゃないね。 まあいい。 レベッカ、たまには長期出張に出てみる気は無いかな?」 「長期出張?」 「ああ。 まだ時期は未定なんだが、エメリアによる大陸の解放が順調に進んでいるおかげで、ユークトバニア経由で取材班をエメリアに送り込むことが出来そうなんだ。 従軍のような形は難しいかもしれないが、少なくとも安全が確保されている地域での報道活動は出来るだろうと我々は考えている。 OBCナイトニュースの看板アナウンサーの不在を埋められる奴はそうはいないのだが、向こうの地理にも詳しいガイド役は必要だろうからね。 で、どうだろう?」 「ご提案は嬉しいのですが……受験を控えた娘もいますので……」 そう答えながらも、既に背中に翼を生やして飛び立とうとしている自分がいることをレベッカは自覚している。 そしてそんなことは承知の上で、報道局長は提案を投げてみたのだろう。 ひょっとしたら、姿を見ないということは無いけれども、この時間に休憩室に現れたこと自体が計画済みだったのかもしれない。 ということは、自分は相手の手中にあるってことかしら?まんまと搦め手に成功してみせた局長を、レベッカはじっと睨み付けてやることにした。 「そんな怖い目をしないでくれよ。 実は番組の君の相棒……マクワイト君からも相談を受けていてね。 エメリアの、君の祖国の窮状を、祖国とは遠く離れたこの地で平静を装って報じなければならない君を見ているのが辛い、とね。 叶うものなら、エメリアの特別取材班として派遣することは出来ませんか、そのためなら視聴率は落ちるでしょうが代役は自分が何とかします、とも言っていたかな」 ボールペンをへし折る度にびくり、と反応していたマクワイトの表情を思い浮かべ、その観察眼にさすがは記者の一人……とレベッカは認識を改めることにした。 だが困ったことに、その分析は事実に限りなく近かった。 そう、良人自らの失態に原因があるとはいえ、別居の期間が長引くにつれ、そして祖国が戦火に焼かれ、その人も否応無く戦争に巻き込まれていったことが明らかになるにつれ、レベッカの心の中に焦りが生じていった。 そして、一時は国土の大半を失った祖国が再び息を吹き返してエストバキアを退け始めると、喜びの反面、何故自分はここにいるのだろうという思いが膨らんできたのだ。 軍人で無い自分は、もしかしたら彼の足手まといになるかもしれない。 それでも、あの国には、グレースメリアには、レベッカの良く知る仲間たちがいる。 ニーナを連れて行くわけにはいかないけれども、やはり自分だけが安全なオーレッドにいることには、忸怩たる思いが募るばかりなのだった。 「局長も人が悪いですよ、本当に。 ……それで、いつ頃から取材チームを送り込むつもりなんですか?」 「そうだね、まだ今はその時点ではないと考えている。 エメリアが急速に勢力圏を回復しているとはいえ、まだ本来の国土の半分にも到達していない。 少なくとも西側の安全は以前よりは確保されているとは思うけれども、シルワートのギルバートの話によれば、小規模な残存部隊が未だに抵抗を続けているだけでなく、義勇兵となった市民たちとの小競り合いも起こっているらしい」 「義勇兵……!正規軍相手に無茶なことを……」 「珍しい事じゃないさ。 ベルカ事変の時も、環太平洋事変の時も、立ち上がった市民たちはいた。 今度はエメリアの番ということだね。 で、時期の話だけど、目安はサン・ロマ市の奪還後と私は考えている。 サン・ロマはもともとグレースメリアから逃れたエメリア軍が一時は拠点としていた都市だ。 軍事的な拠点だけでなく、生産拠点としても規模が大きく、大規模な港湾施設も持っている街だ。 この都市の奪還は、エメリアの勢力を更に拡大する事になるだろう」 サン・ロマの奪還が目安。 既にエメリア軍はシルワート市まで進軍し、さらに勢力圏を拡大している。 あの街を取り戻すことが出来たなら、グレースメリアへ至る一大拠点をエメリアは手に入れることになる。 そして、その日は決して遠くはないに違いない。 再び、エメリアへ。 そして祖国の真実の姿を、自らの手で伝えること。 大任に気が引き締まると共に、背中に翼が生えてくるような気分になってくる。 ……ガイドとしても、私以外の適任はいないでしょう。 スタッフ、派遣時期、バックアップ体制については、私に一任して欲しい。 社内の腕っこきを集めてくる事にしよう。 それと……これは私からの餞別だ」 そう言いながらトンプソン局長が取り出したのは、見るからに古びた1本のビデオテープ。 今時珍しくなったVHS。 一つ間違えると、デッキの中で引っ掛かりそうな年代物だ。 ラベルも何も貼られていないそのテープを、局長はわざわざ持ってきたらしい。 首を傾げつつもレベッカはそのテープを受け取った。 「その中には、私の原点がある。 きっと君も……これを見たら、立ち止まれなくなる。 いや、そうなってもらいたい。 局の設備を使ってくれて構わないが、必ず一人で見ること。 いいね?」 何が入っているか分からないけれども、念を押すとどこか楽しげな微笑を浮かべて、トンプソン局長は休憩室から出て行った。 その後姿を見送りながら、少し冷静になってきた頭でレベッカは考えた。 不在期間中のニーナの生活の手配をして、派遣中の準備をして、それから後は……。 急に動き出した歯車。 でも、自分の背中を強引に押してくれた局長に、レベッカは心から感謝したくなった。 彼女の心は、既にグレースメリアへ向かって飛び立っていたのだった。 やっぱり似合わないよなぁ。 自分の服装と現状とを眺めながら、ディビット・キリングスは何度も心の中で呟いていた。 所属していた原隊を離れ、派遣されたのは敵地のど真ん中となった、エメリア首都グレースメリアへ潜入する特務部隊。 電子機器関連のエキスパートという肩書が、今回の特殊任務では欠かせない事からの動員であることは明白だったが、いざ実際に加わってみれば要員の大半は筋骨隆々とした戦闘のプロばかり。 勿論兵士としての訓練も受けているし、銃撃の腕前も並より上の水準を維持してはいるキリングスではあったが、それでも集団の中では浮いているのは否定のしようも無い事実なのであった。 「信じられねぇな。 ここらまで来ればグレースメリアの街並の光が煌々としているのが見えたんだが……。 見てみろよ、真っ暗だぜ」 「一体何をすれば、ここまでエメリアの経済をメタメタに出来るんだかな。 ある意味、大した能力だ」 暗い夜道を走るトラックの荷台からは、戦争前なら見られたであろうグレースメリアの夜景はほとんど見ることが出来ない。 灯火管制が敷かれていることもあるのだろうが、まるで大都市が丸ごと存在しなくなってしまったような情景だった。 冬の冷たい風が車内にも入り込んできて、この地が真冬の最中であることを嫌というほど知らしめてくれる。 白い息を吐き出しながら、キリングスは今や遠く離れた地でエストバキア軍との戦いを続けている友人たちのことを思った。 「さて、既に分かっているとは思うが、念のため再確認しておこう。 俺たちは、グレースメリアの建設会社に雇われた作業員ということになっている。 先導隊がグレースメリアの義勇兵部隊と渡りを付けてくれてはいるが、いずれにせよ敵地のど真ん中だ。 いざとなれば強硬手段で道を切り開くことも考えねばならん。 ま、数日は力仕事が続く。 昼間張り切りすぎて、肝心の時に役に立たない……なんてザマは見せるなよ、おまえら?」 オイルやペンキの付いた、お世辞にも綺麗とは言えないつなぎを着た男が、一同に顔をめぐらしてそう話しかける。 その男こそ、この一団を率いる隊長、ダントン・バンディッツ少尉であった。 ちなみに、そんな格好をしているのは何も隊長だけではない。 トラックの荷台に乗り込んでいる男たちは、グレースメリア潜入に当たって現地から集めてられてきた本物の作業服に着替えていた。 キリングスに至っては、見かけが真面目すぎるという理由で、髪型を今時の若者風に染められる始末であった。 とはいえ、服装はともかくとしても、軍人の眼光はそうそう覆い隠せるものではない。 自分たちと同じような任務に就いている相手に見つかる事が最も恐ろしいのだ、とバンディッツはキリングスに語ったものである。 「それから、今回は電子機器と電子戦のエキスパートを一人借りて来ている。 おまえらには悪いが、今回はこいつの安全を確保することが何より重要だ。 よって、喜んで楯になるように。 ま、1発や2発撃ち込まれても死なねぇ奴しかいないから大丈夫だと思うがな。 おまけに、こいつは通訳としても使える。 いざとなったら協力を仰ぐように」 やってらんねぇ、という笑い声が少し控えめに車内に響く。 1発だって、当たり所が悪ければ即死するのが現実だが、どうもここで乗り合わせている面々はその辺の恐怖感というものが無いらしい。 歴戦の戦士たちとも言えるが、ちょっとネジが緩んでいるか外れている軍団と言えなくも無いか、とキリングスは勝手に分析する。 「とはいえ、キリングス。 お前さんの出自を無断使用するようなミッションで済まない。 だが今回、「訛りの無い」エストバキア語を使いこなせる人材は貴重なんでな。 悪いが、その能力は最大限利用させてもらうことになる。 そのつもりでいてくれ」 「分かっていますよ、バンディッツ隊長」 「ああ、そうそう。 こいつは今では俺たちと同じエメリアの同朋だ。 今攻め込んできているクソ虫どもの同朋だなんて言った奴がいたら、この俺が再教育をしてやるから、遠慮なく名乗るように。 とりあえず頭に風穴開けて、そこからタバスコをダース単位で流し込んで刺激を与えてやる。 いいな!?」 どこまでが本気でどこからが冗談なのかが分からなかったが、この豪快な隊長が「微妙な」出自のキリングスを気遣ってくれていることは充分過ぎるほど伝わってきたので、彼は素直に感謝する事に決めた。 そして幸いにも、この部隊に所属している面々はそんな細かい事を気にする神経は持ち合わせていないことも、キリングスにはありがたかった。 もっとも、自分の出自がこうして役に立つ日が来るとは、何とも皮肉なものだったが。 そう、キリングスがこのミッションの要員として選ばれたのは、彼が電子戦のエキスパートであると同時に、エストバキアで生まれ育った経歴を持ち、流暢なエストバキア語を今でも使いこなせることも、要件の一つだったのである。 隊長の話が終わり再び沈黙が戻った荷台で、キリングスはベストの胸ポケットを漁った。 彼が取り出したのは、少し古びて色の褪せた小さな箱と、角が折れて少し千切れてしまっている、こちらも古い一枚の写真だった。 その写真の中では、30人くらいの子供たちと二人の大人が、変わらぬ笑顔を浮かべている。 30人のうちの一人が、キリングス自身。 そんなごくごく普通の日々が、宇宙から落ちてきた隕石の欠片によって一瞬にして断ち切られ、全ての歯車が狂うなんて現実を目の当たりにするなんてことを知らなかった、幸せな頃の記憶。 もう、その写真を撮影した校庭は、この世界のどこにも存在しない。 エストバキア国内に降って来た隕石の欠片の一つが、学校だけでなく彼の郷里を根こそぎ削り取ったのだ。 灰燼と化した街のあった場所には、クレーターしか残らなかった。 キリングスが助かったのは、偶然がいくつか重なった結果でしかない。 数日前、友人と遊んでいて怪我をした指先が、その後何かの細菌によって派手に膿み、腫れてしまったので、車で1時間ほどの所にある病院に母親と共に来ていたその時、あの悪夢がやってきたのだ。 悪夢が奪っていったのは、故郷だけでは無い。 父親も、妹も、共に学んだ級友も、キリングスの成長を綴ったアルバムの数々も、全てがこの世から消えてなくなった。 ついでに言えば、生活していくための基盤も。 程なくして始まった内戦は、キリングス同様に家族を失った人々の困窮に拍車をかけた。 それでも彼にとっては幸運な事に、エメリアで起業した叔父夫婦を彼は頼る事が出来た。 なけなしの預金をかき集め、エメリアへ脱出するための切符と当面の生活費を手にしたキリングス少年だったが、エメリアへ向かうバスには一人で乗った。 母親は「同じバスが取れなかったの。 後から行くから、先にグレースメリアで待っていて」と彼を見送ったが、実際は違った。 子供を送り出すのが精一杯だったのだ。 グレースメリアで、キリングスは母の到着を待ち続けた。 叔父夫婦は実の子供としてキリングスを受け入れてくれていたし、第二の故郷でも友人たちに恵まれたことは、キリングスにとって何よりも幸運だった。 それでも、生き別れた母親の事は忘れられない。 エメリアの新聞では、エストバキアの苦境と内戦とが、まるで他人事のように報じられていた。 そんなある日の新聞の一面に、彼は見慣れた地名を見出した。 それは、母と別れた、あの街の名だった。 対立する軍閥同士が、拠点の確保を競って市内に乱入、双方の協力者を根絶やしにするため無差別に市民を虐殺した、というニュースだった。 驚いた事に、それはキリングスがエストバキアを起って、わずか2日後の出来事だったのである。 生存者のいなくなった街は、くだらない勢力争いの格好の舞台となり、さらに多くの兵士たちの血によって染め上げられていった。 もう、僕が失うものは何も無い。 全て、無くなってしまった。 その日以降、自分の家族の事をキリングスは決して語らないようにした。 叔父夫婦に余計な心配をかけたくないと、子供心に思ったせいもある。 だが、それだけではない。 口にしたら、もう会えない家族たちのことを思い出して、胸がはち切れそうになるのが怖かったから、だから自分で自分の心に鍵をかけたのだ。 そして、今ではもう、母親どころか父親と妹の顔もはっきりと思い出すことが出来ない。 住み慣れたかつての故郷の風景は思い出すことが出来るのに。 医者によれば記憶障害の一つだということらしいが、断ち切られた過去を懐かしんでも仕方が無いと、いつしかキリングスは思うようになっていたのだった。 そんな自分の出自が、こうして役に立つ事があるというのは、最早皮肉以外の何者でもなかった。 ただそれだけでの抜擢なら、キリングスはミッションへの参加を拒んだかもしれない。 だが、このミッションが成功した暁には、エストバキアとの戦いで嫌でも避けて通れない「謎の巡航ミサイルとその発射基地」の謎を解き明かすことが出来るだけでなく、彼の現在の大切な友人たちの支援が出来るというオマケが付いていた。 勘所の良い彼なら、必ずや独力でも謎を解き明かしてくれるに違いない。 時間をかければ、だが。 そして今回はその時間が惜しい。 加えて言うならば、実際に空の最前線で戦い続けるエッグヘッドやジュニアたちの役に立ちたかった。 そして今、キリングスは敵の秘密兵器の正体について、ほぼ確証を持ちつつある。 エストバキア軍のエメリア占領軍司令官である、ドヴロニク上級大将の経歴を改めて調べ直すうちに、その情報は見つかったのだ。 それだけではない。 古びた写真から目を離し、キリングスは荷台の外に広がる星空を見上げた。 昔のように点灯している街灯は一つも無く、平原は黒一色で塗り潰されている。 そのおかげか、今までに無く星空は本来の輝きを取り戻し、瞬いているように見える。 だが、キリングスにとって、夜空は忌まわしい記憶を呼び覚ますものでしかない。 写真をポケットに戻し、腕組をして、キリングスは目を閉じた。 他に出来ることが無いなら、せめて体力くらいは温存しておくよう努力しよう……そう彼は決めた。 「申請のあった車輌の通過を確認」 『周辺に異常は無いか?』 「あるわけないだろ。 ろくに点検もしてないんだろうな、排気ガスのにおいがひどいぜ。 それにしても寒い。 さっさと引き上げて、ストーブの前に陣取りたいもんだぜ」 『あと1時間だろう?我慢しろよ。 ここには例の「鳥のエンブレム」だって飛んでこない安全地帯だ。 まだ寒さの方がましだろうよ』 「見たことの無い敵よりも、寒さの方が難敵だっての。 まあいいさ、交代は早めに頼む。 オーバー」 街灯の明かりすら無い平原では、遠くを走る車のテールランプの赤い光をはっきりと確認することが出来る。 グレースメリアの「再建」に必要な労働力が徹底的に不足する状況下、なし崩し的に街の封鎖を解除するに至った。 結果的に周辺都市間の流通が活性化して、一時のような困窮状況からは脱しつつあったが、かつての首都は戦争前の豊かさが嘘のように疲弊し、荒れつつあった。 焼け石に水にならなきゃいいが……と、先程のトラックを見送りながら、ペレルマンは煙草に火をつける。 平原を吹き抜ける冷たい風がどう、と吹きつける。 法外に安い給金でこき使われることになるであろう労働者たちに同情しつつ、彼は星空を見上げたのだった。

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ほおずりしたくなる天使の赤ちゃんの可愛さにめろめろ!

背中に生えた翼は君とともになくした

どんな異能をも打ち消す右手を持つ主人公と、全てを反射する学園都市最強の超能力者という構図。 ヒーローの対比や学園都市における二人の役割など、何かと因縁のある二人であり男女問わずファンも多い。 特に原作では一方通行の上条に対する憧れが顕著で、スピンオフなどでも時折その描写が見受けられる。 原作読者として知られる上条当麻の声優、阿部敦氏はアニメ3期のインタビュー等で一方通行に対して 『こいつ俺に憧れてるんですよ』『面倒くさいファン』『こじらせヒロイン臭がする』と発言している。 また、漫画版超電磁砲作者が描き下ろした4コマでは 初春が上一同人誌を抱えていたり、公式4コマアンソロジーでは 初春が上一小説を執筆していたりとネタにされることもしばしば。 作中の描写 上条、一方通行ともに身長は168cmだが上条は中肉中背、一方通行は華奢、細身などと表記されている。 髪も黒と白、ツンツンヘアーとサラサラヘアー、最弱と最強などと何かと対になっていることが多い。 一方通行に関しては「少女のような繊細な肌」や「宝石より美しい瞳」など容姿に関する描写も多く見られる。 また、表向きは能力開発を目的としていた学園都市だが、その正体は幻想殺しを呼び寄せ、成長させるための『箱庭』であり、幻想殺しを持つ上条当麻、そして学園都市が50年をかけて生み出した科学の結晶である一方通行は、アレイスターの計画を成就するために必須の存在である。 つまり この二人こそがメインプランの核であり、正にアレイスターの『成果物』と言える。 旧約5巻では 「女か男か分かンねェ体型になっちまうしよォ」と発言、また、旧約8巻の作者あとがきでは作中に一方通行が登場しているにも関わらず 「明確な男子キャラクターは上条当麻ただ一人しか登場しません」と書かれている。 新約に入っても真相は明らかになっておらず、上条や美琴を「ボーイ」「ガール」と呼ぶ大統領に「ジャパニーズ」と呼ばれていたり、去鳴に可愛い本名と言及されたりと性別をほのめかされることもしばしば。 (鈴科百合子ちゃんなのでは?) 新約21巻ではついにオティヌスからも「男か女かはっきりしてないヤツ」と言われてしまった。 口調・呼び方など 上条当麻 一人称は「俺」 一方通行に対しての呼び方は「お前」「一方通行」、語気を荒げたときは「てめぇ」など。 普段の口調は一般的な高校生男子のそれだが、たまに「~でせうか?」「上条さんは~」など独特の言い回しをすることも。 一方通行 一人称は「俺」 上条に対しての呼び方は「オマエ」「三下」「善人」「ヒーロー」「無能力者」など多岐に渡るが名前を呼んだことは一度もない。 (ただしアニメ1期19話ではモノローグ内で「上条当麻」と発言しており、新約22巻では「上条当麻の世界を眺めろ」と地の文ではあるが名前が登場している。 ) 一応、連絡先の交換や新約9巻の上条殺害依頼メールへの反応から上条の名前は認識している模様。 また、上条に「三下」と呼ばれてから自身も「三下」という呼び方を使いはじめるなど口調にも影響が見て取れる。 (超電磁砲では上条より先、つまり同時期に「三下」と発言している) 「オマエ」「ァィゥェォ」「ン」がカタカナ表記。 二人称は基本的に「オマエ」で、「自分」という意味で「てめェ」を用いることはあるが二人称として使ったことはない。 旧約 3巻 一方通行が絶対能力進化計画に参加し2万人の妹達を殺害する実験を行っていたところに、上条当麻が介入する形で初交戦を果たす。 能力を過信し無能力者と侮っていた一方通行は、異能を打ち消す上条の幻想殺しに敗北する。 以降、二人を巡る奇妙な因縁がはじまった。 5巻 研究所から逃げ出してきた打ち止めと出会う一方通行。 彼女のピンチにどうしていいか戸惑い、助けるのは 『あの無能力者のような人間にこそ相応しい』とまで自嘲するが、何かが変わるかもしれないと今まで妹達を殺してきた手で打ち止めを救ってみせた。 そこで上条に対し、 『生まれた時から住んでる世界が違うヒーローのように見えたが、違ったのだ。 』と気づくことになり、守るべき存在を得る。 6巻 新学期になり転校生がやってくるという噂を聞いた上条、想像した転校生の羅列の中で 「一方通行の本名が実は鈴科百合子ちゃんだったり」と妄想を繰り広げる。 (8巻末にセーラー服姿の一方通行の設定画有り)詳しくはを参照 8巻 残骸事件でニアミス。 お互いを認識しないものの事件解決の一端を担う。 12巻 上条は打ち止めと、一方通行はインデックスとの邂逅を果たす。 お互いに詳細を明かさないまま保護者の話を聞かされ、上条は「いいヤツ」、一方通行は「名前を聞くだけでイライラする」という印象を受ける。 13巻 電話でお互いの素性に気づかないまま初めての共闘を果たす。 15巻 暗部抗争編、一方通行を引っ張り出すために打ち止めや一般人を狙った垣根と戦闘。 圧倒的な力でねじ伏せた後、あの忌々しい『善人』との立ち位置の違いをぼんやり考えつつ、垣根にとどめを刺そうとする。 19巻 「お前のような悪党が、善人を知っているとでも言うのか?」という杉谷の問に対し、一方通行は「知っているさ。 ……思い返すだけで頭にくるぐらいにな」と答える。 20巻 打ち止めを救うためロシアに向かった一方通行は、魔術師に対し右手を使って迎撃をするなど、上条を意識した戦い方を見せる。 (その際「やっぱ、俺には右手は似合わねェか」という言葉を残している) 道中、一方通行の心を叩き折るためだけに製造された番外個体と交戦、なんとか退けるものの打ち止めの笑顔を取り戻したくらいでは足りないというレベルで心を壊されてしまう。 そんな折、たまたま近くを走行していたトラックに上条が乗車していることに気づき、『なんで第一位と違いちゃんと人を救えるヒーローが、打ち止めの危機には気づいてくれずここを素通りしようとしてるんだ』と、半ば八つ当たり的に襲撃。 そのまま2回目の交戦となる。 戦いの中で一方通行は最初から全力で攻撃を叩き込むものの、 『一方通行が知る中で最も重要な位置に存在する"悲劇を食い止めるための存在"がこんなにも簡単に失われてしまうとしたら。 この世界は。 多分もう本当の意味で終わってしまっている』と上条に対しての感情を顕にする。 そして、その攻撃を受けてなお立ち上がる上条が、一方通行にはどうしようもない運命のレールを軽々と飛び越える象徴のように見えたのだった。 戦闘は続き、一方通行は自分の心情を吐露していく。 ヒーローにはなれないと叫ぶ一方通行に対し、「ヒーローなんか必要ねえだろ」と返す上条。 やがて上条の拳は一方通行を捉え、死闘は幕を下ろす。 戦闘後、気絶した一方通行の懐に羊皮紙があることに気づいた上条は、一方通行をトラックの荷台へと運び、何かのヒントになるであろうとインデックスの名前が書かれたメモを残す。 その後気がついた一方通行は、残されたメモを見てそれが解決策につながることに気づき、白い天使が祈りでも捧げているかのように(地の文ママ)上条からのメモを握りしめる。 22巻 羊皮紙による歌で魔術を行使し打ち止めを救った一方通行は、頭上に光の輪と背中に羽を出現させ浮上。 『ベツレヘムの星』から投下された『天使の力』を『白い翼』で迎撃し、フィアンマによる大量虐殺を防ぐ。 これが間接的に上条を助け、フィアンマの撃破に繋がったのだった。 新約 1巻 ロシアから帰国し、つかの間の平穏を手に入れた一方通行は上条が無事に学園都市に帰ってきているのかを案じていた。 その後、『新入生』の襲撃に対し一方通行は、 「……良いだろう、乗ってやる。 その上で、真正面からぶっ壊すのが『あの野郎』のやり方だったよなァ」と、かなり上条を意識した戦い方を見せる。 一方帰国した上条は黒夜が放った最後の一撃を止めることで介入、「なんか騒がしかったから首を突っ込んでみただけ」とあっさり言う上条に対し、一方通行は根本的な立ち位置の違いを再確認して舌打ちをする。 2巻 今後のために 携帯電話の番号とアドレスを交換する。 一方通行と浜面に魔術を説明するため、上条の部屋でこたつを囲みながらバードウェイによる魔術講座が開かれる。 休憩の際、風呂場に隔離しておいた黒夜と上条のやりとりをベランダで聞いていた一方通行は、彼にしては珍しく静かに顔を青ざめさせていた。 その後、突如上空に現れたラジオゾンデ要塞を迎撃するために3主人公が共闘。 一方通行は人の流れから地脈を読み取るなど、魔術のようなものを行使してみせた。 3巻 グレムリンを止めるためにハワイへ。 ここで初めて、本当の意味での共闘を果たす。 『ここは俺向きの戦場だ。 だからオマエはさっさと行け』『……借りは後で返す。 簡単にやられんなよ』 6巻 復活した垣根との戦闘で『ヒーロー』への幻想から脱却を決意し再び悪の道へ戻ろうとしていた一方通行は、「それはただの逃避だ」とミサカネットワークの総体に忠告を受ける。 7巻 人的資源にて集まった1000人もの偽ヒーローたちから上条を逃がす形で一方通行が介入。 「……面白ェ。 何ならテストしてやるよ、ヒーロー様。 その名に冠するに相応しいかどォか、最も血に汚れたこの両手でなァ!!」と力を奮った。 10巻 オティヌスを連れてデンマークへ飛んだ上条に対し、学園都市は超能力者たちに抹殺命令を出す。 メールを見た一方通行は真っ先に宇宙から軌道上防衛兵站輸送システムを用いデンマークへ向かう。 デンマークへと着弾した一方通行は、直後に視界一面が彼の顔で埋まるほどの至近距離へと接近。 容赦なく上条へと攻撃を叩き込み3回目の交戦。 その際、 『誰か守りたいと思ったときに出現する白い翼』が背中に生えたり、 「いちいち面倒見ンのは携帯電話のメモリに入ってる連中くらいで十分だ」との発言を残している。 そして、反射の壁を貫かれてでも突撃すると覚悟を決めた一方通行の攻撃を、上条は自らの右手を犠牲にすることで撃破する。 しかし、一方通行の襲撃は 『第一位の自分が一番に負けることで学園都市の驚異から上条を守る』ための作戦だった。 この作戦は、負けることで誰かを守ることが出来るようになった。 と、総体にも評価された。 15巻 上里翔流の妹、去鳴が登場。 『上条勢力』の面々を当たっていた彼女は、一方通行にも接触する。 また、激昂し追ってきた一方通行を誘導し上里勢力のど真ん中に叩き込んだ際、 「馬鹿なヤツ。 上条当麻にはさ、"とびきり面倒臭いファン"がついているっていうの知らないの、お・に・い・ちゃん?」というセリフを残している。 18巻 学園都市は幻想殺しを持つ上条当麻を呼び寄せるため、そして絶対能力者へ至る能力者=一方通行を生み出すための場所であったことがアレイスターの口から明かされる。 つまり上条と一方通行こそがメインプランの核であり、アレイスターの目的を達成するために必須の存在だと語られた。 19巻 AOフランキスカを追っていた一方通行は、自動書紀モードのインデックスを前にし「……これは本来、俺の領分じゃァねェと思うンだがなァ」と『相応しき者』(上条)の元へと叩き込む。 その後、少女へと変貌したアレイスターと行動を共にしていた上条と、一方通行と浜面が合流。 コロンゾンを倒すために、各々の理由を持ってイギリスへ向かうこととなる。 20巻 コロンゾンを倒すためイギリスへ向かった一行であったが、直後アレイスターが上条を処刑塔へと落とし別行動となってしまう。 その際、一方通行は上条の行方を探しに行った女性陣たちを指し、そっちの方へついていけば良かったというような口ぶりを見せつつアレイスターに同行している。 また、アレイスターは処刑塔で上条の右手を利用しコアを破壊させることが目的だったと明かした際、怒りを見せた一方通行に対して 「そんなに怒るなよ、一方通行。 君は彼を宝石箱にでも入れて大切に保管したいのかね?」と揶揄している。 さらに、アレイスターが聖人と交戦した際 「やたらと右手にこだわるな」と尋ねる一方通行に対しては「ただの憧れさ。 君はどうかね?」と返していた。 その後、アレイスターはメイザースの死体を利用するため墓地へ赴くも、そこに死体はなく、メイザースを含む『黄金』の魔術師たちが現れアレイスターの心を叩き折る。 完全に折れてしまったアレイスターであったが、その左右を固めるようにして上条と一方通行が並び立ち、『黄金』へ向けて声を揃えて宣戦布告をする。 「「アレイスターは一人ぼっちじゃない。 ヤツの成果物はここにいる!!」」 21巻 開幕から上条と一方通行の共闘でメイザース含む黄金と渡り合う。 一時は撤退するものの、メイザース打倒のため上条、一方通行、オティヌス、アレイスターで行動を共にする。 黄金から追われながらも打開策を探していくなかで上条と一方通行の学力の差による魔術への理解度の対比をコメディで描くなど、シリアス以外の場面も多い。 また、オティヌスが「男か女かはっきりしてないヤツ」と発言したことによって性別不明設定が更新される。 上条と一方通行の漫才のような掛け合いや、息の合ったコンビプレーは必見。 その後、各々の目的のために解散するものの、コロンゾン打倒のため主人公たちは舞台へ集結していく。 22巻 ついにコロンゾンと対峙する上条であったが、大悪魔の圧倒的な力により文字通り粉々に破壊されてしまう。 アレイスターが右腕を切り飛ばした上で回復魔術により肉体は再生されたものの、撤退を余儀なくされる。 御坂と食蜂がコロンゾンを振り切る方法を考えていたその時、戦場に降り立ったのはクリファパズル545を従えた一方通行だった。 新しく得た魔術の知識によりコロンゾンと渡り合うものの、逃げられてしまう。 (正しくは逃されている) コロンゾンを追うため、一方通行とクリファパズルは単独行動を始める。 情報を整理するための会話の中でクリファパズルが上条を馬鹿にした際には、 3行にも及ぶ3点リーダと「ほォ?」により"核地雷"級の怒りを見せるなど以前にもまして上条に対する一方通行の心情描写が顕著。 また、パパと呼ばれた際「パパじゃねェだろ」と反論するものの、「じゃあママなんですう?」の返答に対しては再度3行に及ぶ3点リーダの無言になるなど、 性別不明設定も健在。 その後、一方通行はコロンゾンと手を組んだ浜面を発見した際に魔神ネフテュスによって操られたクリファパズルから攻撃を受け負傷してしまう。 深く後悔し涙を流すクリファパズルに対し、「こんな時、上条当麻ならどうするか」と一方通行は自問する。 また、 『上条当麻の見ている世界を眺めろ』と行動の基準を上条にしており、さらに別の視点も加え上条には出来ないことを補う決意を新たにする。 コロンゾンが占拠するクイーンブリタニア号へと攻撃を仕掛けていた一方通行は、右腕を取り戻し船へと乗り込む上条を確認し、さらに揺さぶりをかける。 実質的に魔術を行使できるようになった一方通行はコロンゾンをローラの体から引き剥がす。 必死に中のモノを抑え込もうとする上条だったがついにその力は溢れ出し、クイーンブリタニア号は真っ二つに分断されてしまう。 その後何故か右腕がくっついたものの、未だ暴発するような違和感を抱えたまま上条は誰も傷つけないところへ逃げるため氷の大地を走る。 一方、船に残っていた一方通行は瀕死のアレイスターを発見、学園都市の全権を預けられ、その最期を看取った。 22巻リバース 前巻で暴走した上条の右腕が変化したのは、『幻想殺しと失われた過去を持つ自分』であった。 そして幻想殺しを失った上条のもとに残ったのはスカイブルーにレモンイエローのラインが入った異形の右腕だった。 自分の根幹を揺るがされた上条であったが、オティヌスの計らいで集まっていた一方通行や浜面達と合流し、自分の状況を説明する。 「今の自分は特別じゃない、自分が上条であると証明できない」という上条に対し、「今ここにいるオマエに何か不備でもあンのか」と返す一方通行。 一方通行や浜面達との会話で自身を取り戻した上条は、もうひとりの上条を倒すことを決意する。 (なお、一方通行は復活した上条を見て嬉しそうな顔をクリファパズルに指摘されている) 協力者を得てウィンザー城へ乗り込む上条、道を作るため陽動に徹する一方通行や浜面たち。 (一方通行はここでも上条から陽動を任されて嬉しそうな顔をホレグレスに指摘されている) カーテナセカンドを操る英国女王エリザードと激突する一方通行は統括理事長としての力と新しく得た魔術をフルに使い女王を圧倒。 互いの思いをぶつけ合い、ついに上条はもうひとりの上条を撃破する。 そして自動書記を止めることに成功し、過去に決着をつけたのだった。 戦いが終わり、学園都市への帰途についた面々は日常を享受する。 一方で、アレイスターが失踪し窓のないビルを失った学園都市でなお蠢く統括理事会に忍び寄る影があった。 「それじゃ注目、学園都市統括理事長の一方通行です。 暗部を完全になくし罪を犯した者は法によって裁かれる、だがそれは一方通行自身に対しても例外ではなく、一方通行はまず自分が自首することで確固たる決意を表明しようとしていた。 しかしその方針を快く思っていない暗部は存在し、一方通行を引っ張り出すための刺客・舞殿星見が上条と居合わせた打ち止めを狙う。 もちろんそのことは一方通行も予見していたが、『今自分が動いては何も変わらない、学園都市の枠組みが打ち止めを助けることを信じる』と警備員の詰所で堪えていた。 一方で舞殿を撃破していた上条は、一方通行が実験の件で自首していたこと、暗部を一掃するために自らは動けないことを知る。 一方通行の覚悟の重さを悟った上条は、黒幕である統括理事の一人、根丘の打倒を決意する。 そこで、意識を取り戻した打ち止めから声があった。 『あの人を助けるために戦ってくれる?ってミサカはミサカはお願いしてみたり!』 『その、まあ、何だ。 うーん、じゃあこうしようぜ』 『今から黒幕んトコ行って全部ぶっ潰してくるから、結果を待ってろ』 守り抜け。 学園都市第一位の超能力者、なおかつ新統括理事長。 一方通行が紡いだその夢を。 とある魔術の電脳戦記 小説版 バーチャロンを巡り起こる事件を上条は表から、一方通行は裏から探り、やがて同じ場所へたどり着いた二人の、ブルーストーカーを倒すための共闘がはじまる。 ブルーストーカーの情報を得るため病院に出向いた二人は、情報を握っている男に対して息のあった尋問を見せる。 上条の巧みな交渉術は、あの一方通行をもってして「おっかねェヤツ」と評された。 その後、ブルーストーカーとの交戦時、ブルーストーカーが上条の乗るテムジンを一方通行が乗るスペシネフへ投げつけたことにより生まれた一瞬の隙をつき、「いいから、やれええええ!!」とテムジンごと斬ることでブルーストーカーを倒せと叫ぶも、一方通行はその瞬間ふっ、と反射を解除し、テムジンを庇うようにして衝突、ロストしてしまう。 それは一方通行自身が倒しても、上条の挟持を守れない。 という考えからの行動だった。 一方通行が託してくれたチャンスを無為にしないために、上条は最後の敵へと挑む。 ゲーム版 小説版のその後、元通りになった世界では普通にバーチャロンがゲームとして普及していた。 以前の記憶は誰も覚えていないかのように見えたが、上条と一方通行、そして食蜂操祈は『前のバーチャロン』を覚えていた。 そして、再度バーチャロンを巡る事件が巻き起こることとなる。 小説版同様、ゲーム版シナリオでも上条に対する一方通行の絶対な信頼が顕著に描かれている。 関連イラスト.

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背中に生えた翼は君とともになくした

高台へ足を運ぶと、妖精に会える。 妖精は魔法をかけてくれる、空を自由に飛べる魔法を。 けれど、決して会っては行けない、空を飛びたいと望んではいけない。 その魔法は、二度と地上に降りられなくなってしまう魔法なのだから……。 少し前に耳にした、ありえないうわさ話。 確かめるためと嘘をつきながら、小学六年生の少女・天道翼(てんどう・つばさ)は高台を目指し歩いて行く。 幼い頃から憧れていた、空を自由に飛ぶこと。 叶わぬ夢だと知ったのは、もう一年も前のことになるだろうか? 未練が残っていたのだろう。 空を飛べる……という噂話を聞き、今、彼女は……。 「あ……」 視線の先、高台の頂点。 不思議な服をまとった手のひらサイズの少女が一人、静かに微笑んでいた。 噂の妖精だと、翼は早足で歩み寄っていく。 妖精と視線があった時、自然と手を伸ばしていた。 妙な浮遊感も覚えていた。 「……」 足元を見る。 浮いていた、地面から。 空を、飛んでいた……。 「やった……?」 喜んだのもつかの間、違和感を感じて手のひらを見る。 慌てた様子で肩を、背中へ視線を送り……。 「うそ……」 背中には、羽根。 妖精の羽根が生えていた。 気づけば体も随分と縮んでいた。 ……しばらくすれば、知るだろう。 彼女自身が、高台の妖精となってしまったことに。 元に戻る方法など、思い浮かばないことに……。 「天道翼さんという名前の小学六年生の女の子が、闇堕ちしてタタリガミになる……そんな事件が発生しようとしています」 本来、闇堕ちしたならばダークネスとしての意識を持ち、人としての意識はかき消える。 しかし、翼は闇堕ちしながらも人としての意識を保っており、ダークネスにはなりきっていない状態なのだ。 「もし、彼女が灼滅者としての素養を持つのであれば、救い出してきて下さい。 しかし……」 完全なダークネスとなってしまうようならば、灼滅を。 続いて……と、葉月は地図を取り出した。 「皆さんが赴く当日のお昼すぎ……風の強い日なのですが……翼さんはこの高台に来ます。 都市伝説・高台の妖精に会うために。 というのも……」 天道翼、小学六年生女子。 明るく活発な女の子、幼いころは空を自由に飛ぶ事に憧れていた。 あるいは、今もなお……。 けれど、それができないと知ったのは一年前。 諦めた気でいたけれど……。 「あるいはその未練がタタリガミを呼び起こし、そして都市伝説・高台の妖精の元へ赴くことになったのかもしれません」 高台の妖精。 まとめるなら、風の強い日に高台へと赴くと妖精がいる。 妖精は空を飛ぶ魔法をかけてくれるが、二度と地上には降りられなくなってしまう……というもの。 「一縷の望みを託して高台へと登った翼さんは、気づかぬうちにタタリガミとしての力を用いて、自身が高台の妖精になってしまいました」 しばらくすれば、彼女はその事実に気づくだろう。 そして、元に戻る方法を焦って探し始めるだろう。 もっとも、元に戻れないかもしれないという絶望に負けなければ、の話だが……。 「……接触タイミングとしては、翼さんが高台の妖精と化してしまった直後。 それまでは物陰に隠れて、彼女を見守っていて下さい」 接触後、混乱する翼は攻撃を仕掛けてくるかも知れない。 それをいなしながら説得し、一度は倒す……それが、今回のおおまかな流れとなる。 敵戦力はタタリガミと化した翼のみ。 力量は、八人で相対すれば十分に倒せる程度。 妨害能力に秀でており、相手を低空に浮かばせ移動を難しくさせる、上空へと打ち上げ落とすことで麻痺させる、複数に突風をぶち当て加護を砕く……と言った攻撃を使い分けてくる。 「以上で説明を終了します」 葉月は地図などを手渡し、締めくくった。 「空を飛びたいと願った翼さん。 しかし、それは自分の身のまま……例えば箒で空を飛ぶとかそういうことで、決して他の存在に変わることなど望んでいないはず……。 ですのでどうか、全力での救出を。 空に近い高台を目指し歩く中、村山・一途(硝子細工のような・d04649)はひとりごちる。 「言葉通り、そっくりそのままに夢を解釈されて、肝心な部分が置いてけぼり。 ああ、確かに都市伝説らしい話なのかもしれませんね」 都市伝説・高台の妖精。 出会った者に空を飛ぶ……二度と地上に降りられなくなる魔法をかける都市伝説。 タタリガミと化していた少女・天道翼が出会い吸収してしまう都市伝説。 話に聞いていた翼の事を思い浮かべたのだろう。 穂都伽・菫(煌蒼の灰被り・d12259)は静かに目を細めた。 諦めきれないくらいの強い願いがあるだなんて、とても素敵なこと。 「……翼さんの願いを叶えてあげたい、その為にも助けてあげないと」 「助かる可能性があるならむざむざタタリガミにさせとくこともないわよね」 ウィスタリア・ウッド(藤の花房・d34784)が小さく頷き返した時、高台の頂点となっている開けた場所が見えてきた。 灼滅者たちは顔を見合わせた後、木々の影に隠れるようにして開けた場所を目指していく。 開けた場所の先、高台の端には、羽根の生えた小さな、本当に小さな少女が一人。 高台の妖精だと判断しつつ、翼の到来を待っていく……。 程なくして、翼は現れた。 話に聞いていたように、妖精と重なりあうようにして同化した。 気づかぬうちに空を飛べるようになっている事に気付いた翼は笑みを浮かべ、直後に困惑の表情を浮かべていく。 気付いたから。 自分が、妖精になってしまったことに。 不安げな様子で周囲を見回し始めた翼に、灼滅者たちは落ち着いた足取りで歩み寄っていく。 余裕がないのか気づかぬ様子の翼に、流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)が穏やかな声音で声をかけた。 「こんにちは、妖精さん。 ……あんまり楽しそうじゃないね」 「え……」 知信に、灼滅者たちに視線を向けた後、体を守るように半歩分だけ下がる翼。 怖がらせるわけにも行かないと、灼滅者たちは立ち止まる。 ただ、優しく微笑みかけながら、上里・桃(生涯学習・d30693)が切り出した。 「こんにちは、翼さん。 突然妖精になってびっくりしてるでしょう」 不安げな色を浮かべながら頷く翼。 受け止めた上で、桃は続けていく。 「大丈夫、元に戻れるよ」 証を立てるため狼へと変身に、元に戻った。 「え……」 眼を丸くしていく翼。 見つめながら、桃は続けていく。 「私たちは灼滅者。 こんな風に、不思議な力を使える者だよ。 翼さん、あなたもきっとなれる」 救うため。 絶望せず、妖精から元に戻ろうとしている翼を。 「翼さんは空に飛びたかった。 でも妖精になりたいわけじゃないんでしょう。 だから私たちのような灼滅者になろうよ。 なって空を飛ぼう。 手伝うから、頑張って」 力強い微笑みとともに。 「私たちはあなたに妖精になって欲しくないから、ここへ着たんだ」 「……」 翼はうつむき、口を固く結んでいく。 周囲を風がうずまき始め……。 「っ! 離れて!」 はっと眼を見開いた後、何かを恐れるような表情で灼滅者たちに視線を向けた。 一呼吸の間も置かぬ間に、一途と知信、桃、菫のビハインド・リーア……前衛陣が宙に浮かんだ。 暴走するタタリガミの力が、戦闘開始を告げてきた。 御舘田・亞羽(七変華・d22664)は静かな息を吐きながら、愛用している蛇腹剣に手をかけていく。 「長引かせへんのが情けやね。 急いて行きますえ。 おきばりよし、白蛇さん」 「大丈夫、戻れるよ。 ……こんな姿になっても、ね」 傍らに立つユリアーネ・ツァールマン(ゴーストロード・d23999)も青白い人間大の鳥へと変貌し、静かに翼を見つめていく。 暴走した力を前に怯えている翼に、優しい眼差しを送っていく……。 高いところはあまり得意じゃない。 故にか若干安堵した様子を見せながら、桁外れの重量を持つ剣を構え自らの力を高めていく。 視線は翼を捉えたまま、真っ直ぐな言葉を投げかけていく。 「今の君は、持っている力をうまく使えていない状態なんだ」 事実、暴走した力が前衛陣を襲った。 「元の姿に戻るには、一度力を使い切らなくちゃいけなくて……そのためには、戦うのが確実なんだ」 ビクリと、翼の肩が小さく跳ね上がる。 可能な限り恐怖を和らげてあげたいと、ユリアーネが続けていく。 「さっきもみんなが言ってたけど、戻る方法はあるよ」 自らの、不幸を呼ぶ凶鳥としての姿を示しながら。 「気付いてるだろうけど、その力は普通じゃない。 コントロールできなきゃ、戻れなくなる。 だけど……」 武装を解き、人間としての姿を示していく。 翼に視認させた事を確認した上で、再び武装し凶鳥へと姿を変えた。 「逆に言えばちゃんと自分で抑えることができれば大丈夫。 今、私がそうしたように」 真っ直ぐに瞳を見つめたなら、翼は硬く拳を握りしめていく。 だから言葉に熱を込め、さらなる言葉を紡ぐのだ。 「戻りたいと願って。 戻れるって信じて。 私たちも、その力を抑えるために、協力するから」 強力のために必要なことは、先に語った。 「ちょっと痛いかもしれないけど…信じて。 私たちと、何より自分自身を……! 」 だから、言葉とともに鳥の形をした影を放ち、翼の横を掠めさせていく。 翼は軽く俯いた後、顔を……。 「っ! また……!」 顔をあげようとした瞬間、瞳を見開きユリアーネに視線を向けてきた。 すかさず、桃がユリアーネを突き飛ばす。 代わりに、遥か上空へと打ち上げられた。 「っ……大丈夫です。 私なら、このくらいの高さ……」 桃は空中にて姿勢を正し、着地の構えを見せていく。 地面に着地しようとした瞬間、菫が横からかっさらった。 「え……」 翼が瞳を見開き見つめる中、菫は桃を抱えたまま遥か彼方。 「うそ……」 遥か彼方を、飛んでいた。 箒に乗って、飛んでいた。 視線を感じながら、菫は戦場へと舞い戻る。 桃を下ろした上で、箒に乗りながら翼を見つめていく。 「信じる想いは力になります、諦めなければ願いは叶うのです」 主の言葉に、リーアは頷きながら救うための力を解き放つ。 横合いから、顔の右側を仮面で隠す琶咲・輝乃(あいを取り戻した優しき幼子・d24803)が楓やイチョウの葉が綺麗な紅葉の枝を振るい虚空を切り裂いた。 風刃がタタリガミとしての力を削いでいく中、ウィスタリアは穏やかな調子で改めて問いかけていく。。 「ねえ、ヒトの形に……元の可愛いお嬢さんに戻りたい?」 返答は、肯定。 「繰り返すようだけど、あなたが望むなら、あたしたちはその手助けが出来るわ」 けれど……。 「あくまでも手助けだから、あなたの意志で、元の姿に戻ることを望んで欲しいの」 必要なのは、自分の意志。 「戻っておいで、あなたがその姿だけじゃなく、心まで、その妖精さんに乗っ取られていなくなってしまう前に」 元に戻りたいという強い思い。 「家族も友達も、あなたを好きな人みんな、そのほうが幸せだと思う」 締めくくりとしてニッコリ微笑んだなら、翼は力強くうなずいていく。 けれども風は逆巻き、突風へと代わり戦場を駆け抜ける。 受け止めた亞羽はにっこり笑い、体中に駆け抜けた衝撃などお首にも出さずに微笑んだ。 「大丈夫、大丈夫。 うちらなら、この程度で吹き飛んだりせえへん。 思いっきりぶつけてや」 少しでも翼の心が軽くなるように。 最後まで、翼が心を保っていられるように……。 タタリガミとしての力を、意識を打ち消すため、攻撃を重ねていく灼滅者たち。 一途の振るった十三の刃節を有する両刃の西洋剣が、翼の体に巻き付いた。 腕に力を込めて拘束しながら、一途は語りかけていく。 「空を飛びたい、夢がかなった。 それはそれは、綺麗な話だけれど……ずっとそのままって訳には、いかないよね?」 空を飛ぶ夢を見て、空に囚われてしまった翼。 タタリガミという闇に、侵食されてしまった翼。 今、必死に抗い耐えている、翼。 「その悪夢から、そろそろ目を覚まそう。 自由を夢見て自由を奪われた、そんな悪夢から」 手を伸ばすかのようなしぐさでオーラを放てば、翼は激しく揺れていく。 されどタタリガミとしての意志は風を……。 「タタリガミは大人しく引っ込んでろ!」 させぬと、ウィスタリアが鋼糸を張り巡らさせる。 満足に動けぬ空間を作り出した時、菫は蝋燭に黒い炎をともし黒煙を立ち上らせながら呼びかけた。 「元に戻れたら私と空を飛びましょう。 自由気ままに、満足するまで一緒に飛びましょうよ!」 助けるため、傷つけあってきたこの戦い。 助けると強く願ったから、元に戻りたいと強く願ったからこそ、互いの力を交わしあった。 その果てにあるのは、夢の在り処。 翼が望んだ夢を実現できる場所。 導くため、菫は空に魔力の矢を浮かべていく。 「さあ、終わらせましょう。 ……リーアもお願いします」 主の矢を導くため、リーアは得物片手に駆け出した。 得物が導く場所に、魔力の矢が雨あられのごとく降り注ぐ。 土煙が上がる中、ユリアーネは語る怪談を。 タタリガミとしての力を揺さぶるための怪談を。 息つく暇など与えぬと、輝乃は感情かつしなやかな帯を放っていく。 「これで……」 「終わりに……だな」 知信が言葉を引き継ぐとともに、翼にまばゆいほどの光を浴びせかけた。 風が弱まっていく。 殺気もまた、嘘のように消えていく。 知信は素早く距離を詰め、手を伸ばした。 本来の姿へと戻った翼を掴み、抱きとめた。 耳に届くのは静かな寝息。 元に戻ることができた生命の証。 灼滅者たちは微笑みながら、翼の介抱へと移行する……。 灼滅者たちは翼をベンチに寝かしつけ、各々が風よけになりながらの介抱を行った。 程なくして、翼は目覚めた。 混乱した様子で周囲を見回す翼に対し、桃は笑顔で祝福する。 「おかえりなさい、翼さん」 「え……あ……」 状況を思い出したのだろう、翼は姿勢を正し、頭を下げた。 謝罪とお礼を受け取った上で、一途は優しく話しかけていく。 「悪い夢からは……目覚めたみたいだね」 「……はい」 「……今でも空は飛んでみたい?」 小首をかしげ問いかけたなら、翼は小さく俯いた。 十秒ほどの時を経て、こくりとうなずいていく。 だから、一途は亞羽に菫に視線を送った。 「箒で空を飛べる人だっている。 諦めなければ、今度は夢じゃないかもね」 「そんな人がいっぱいいるの。 私達の学園……武蔵坂学園には」 つなげるように、輝乃が説明を開始する。 ダークネスのこと、灼滅者のこと、世界のこと……武蔵坂学園のことを。 真剣な表情で聞いてくれていた翼が顔を上げた時、亞羽が真っ直ぐに手を伸ばした。 「ちょっと来てみ?」 「……?」 いたずらっぽく微笑みながら、恐る恐る手を伸ばしてきた翼を引き寄せる。 直後に箒に乗って離陸した! 「え……」 「どや、これが箒で空を飛ぶ、ちゅうことや!」 速度を緩め、改めて翼を箒の後ろに乗せた後、晴天ならば太陽があったであろう場所を目指して飛んで行く。 目を丸くして驚き、けれども顔を真っ赤にして興奮している翼に、語りかけ続けていく。 「学園やったら、魂の改竄っちゅう方法で魔法使いも目指せますさかい、来たらええよ」 「……うん!」 空に響く、元気な返事。 風に運ばれ高台の上にも届いていく。 ……こうして少女は手に入れた。 夢へと至る道筋を。 夢へと向かう決意を、強い心を! 吹きすさぶ風に抱かれながら、暖かな温もりに導かれたから……! 作者: 重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし.

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