あずかる こ ちゃん。 病児保育を格段に使いやすくする「あずかるこちゃん」が2020年4月5日(日)よりサービス開始

病児保育の課題解決に取り組む『あずかるこちゃん』園田氏インタビュー「強いチームが社会を変える」

あずかる こ ちゃん

本サービスのポイント• これまで周知されていなかった「病児保育」について、必要な情報を一元的に提供• ICTの導入により、病児保育の「利便性」と「施設稼働率」の向上が期待できる• 「体調を崩した子どもにとって最適な環境の提供」と「保護者の就労支援」を両立 今回ご紹介するのは、CI Inc. が開発中の病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」。 「病児保育」とは、入院するほどではないけれども、発熱や感染症などで保育園に行くことができない子どもたちを預かる保育のこと。 2019年7月にリリース予定の同サービスのポータルサイトでは、この「病児保育」に関する情報を一元的に提供。 同時にLINEを利用した「病児保育施設のネット予約サービス」をスタートさせる予定です。 BabyTech編集部は同社CEO園田正樹さんにサービスの概要や今後の展開について伺いました。 (お話を伺ったのは) CI Inc. CEO 園田 正樹さん 意外なほど知られていない「病児保育」の現状とは? 編集部:まずは「病児保育」の現状について教えていただけますか? 園田:「病児」とは風邪やインフルエンザなど、軽症だけれども保育園では預かってもらえない状態の子どもたちのことです。 私たちが取り扱うサービスの対象は、そのような子どもを預かる「病児保育施設」です。 そこでは「病気のケア」と「保育」の両方を行うために保育士と看護師がおり、施設によっては病院が併設されていることもあります。 そんなスペシャリストを揃えた施設が、実は全国に1750ヶ所ほどあります。 編集部: そんなにあるのですか!? 園田: はい。 ですから、病児保育の「認知度」をもっと高めることも私たちの目標の1つです。 園田:また、病児保育における最大の課題は「施設利用率の低さ」です。 5年前に行われた内閣府の調査によると、病児保育施設の利用率は30%ほどでした。 編集部:せっかくの施設が7割も使われていないのですね……。 園田:使われていない原因として考えられるのが、「利用手続きの複雑さ」です。 下記の「病児保育を利用する際の流れ」を見てください。 そもそも子どもが病気になる前に、施設に「事前登録」をしていなければ利用できません。 しかも、この登録は年度ごとに切り替わるので、毎年やりなおす必要があります。 つまり、子どもが発熱してから病児保育を知った保護者は、基本的に当日には利用できないのです(市区町村によって対応は異なります)。 さらに、これらの仕組みやルールは自治体ごとに異なります。 園田:登録していても、その利用にはさまざまなハードルがあります。 たとえば病児保育施設の予約〜決済の手続きには、大量の書類が存在します。 そして最も困難なのが「施設を利用するための予約」を取ることです。 施設の9割以上は予約受付方法が「電話のみ」のため、それこそ朝は30分以上電話が繋がらないことが日常的です。 これは職員の出勤時間しか受け付けられないために、利用者の電話が特定の時間帯に集中してしまうためです。 たとえば、前日の夜に子どもが発熱したら、翌日の朝7時の受付時間から電話をかけ続け、ようやく繋がっても空きが無ければ、また別の施設に電話をかける……ということになります。 編集部:それは保護者も、施設側にとっても非常につらい話ですね。 園田:さらに問題なのは、この予約の当日朝の「キャンセル率」が3割〜7割にのぼることです。 子どもの体調は変わりやすく、前の晩に発熱してその日のうちに予約を取ったものの、翌朝には体調が回復し、保育園に行けることもよくあります。 ところが先ほどのような電話の状況から、キャンセルの電話がなかなか繋がらず、結果として「無断キャンセル」になってしまう事態が多数発生しています。 また、キャンセルを受け付けた後にも、キャンセル待ちの方に利用確定の連絡をするなど、保育園側には多くの業務が発生します。 さらにギリギリのタイミングで利用確定の連絡が来る場合、キャンセル待ちをしていた保護者はすでに職場を休んで対応していたりもするのです。 このように利用したい人が利用できず、施設側も稼働率が下がってしまう(=利益が出ない)という、困った状況が続いてきました。 編集部:これは本当に大変な状況ですね……。 ちなみに病児保育を受けるには、必ず医師の診察が必要なのですか? 園田:病児保育を受けるには必ず病院で診察を受け、「医師連絡票」という書類をもらわなければなりません。 これは子どもがどんな病気かを証明するもので、その内容によって病児保育施設にある「隔離対応の部屋」と「一般の部屋」のどちらで保育するかが決まります。 病児保育に関する「ポータルサイト」の目的 編集部: 本当に病児保育については、知られていないことがたくさんありますね。 園田: はい。 そこでまず、7月をめどに「あずかるこちゃん」の「ポータルサイト」をリリースします。 このサイトでは「病児保育を利用する際のポイント」や「全国各地の病児保育施設の情報」、さらには「病児保育施設とはどんな施設なのか」ということを、保護者のみなさんにわかりやすくお伝えしたいと考えています。 たとえば病児保育施設は、病院併設で医師の診察から施設への入室までワンストップで行えるところもあります。 さらに「病児(急性期の子ども。 インフルエンザで高熱を出している、など)」は入室できず、「病後児(回復期の子ども。 病状は安定しているが保育園には行けない、など)」のみしか入室できない施設もあります。 しかし、このような情報は市区町村のホームページを探さなければ見つかりません。 だから私たちのポータルサイトでは、そのような近隣にある病児保育施設の情報も簡単に見られるようにする予定です。 編集部: 保護者にとって、とてもありがたいサイトになりそうですね。 園田: ポータルサイトのもう一つの狙いは、「病児保育のイメージをポジティブに変えていく」ということです。 これまで「病児保育」には、ネガティブなイメージが少なからずありました。 たとえば「病気の子どもが集まっている施設に預けると、他の病気をもらってしまいそう」とか「子どもが病気の時くらい、親が仕事を休んで看病するべき」というようなイメージですね。 しかし、実際の病児保育施設は感染性の病気の場合には隔離された部屋を使って保育していますし、子どもの手が触れる部分(=おもちゃなど)は毎日すべて消毒しており、咳やクシャミ、鼻水に対しても「標準的予防策」と呼ばれる病院と同じ対応が行われていることを知っていただきたいのです。 また、病児保育施設は50年くらい前に「女性の就労支援」のためにスタートした制度なのですが、むしろ私は「子供支援」であると考えています。 なぜなら、家庭ではどうして良いかわからない症状が出た場合でも、病児保育施設ではすぐに医療関係者による適切な処置ができます。 さらに継続して保育を行うことができますから、発達・発育の面でも良い環境にあります。 つまり病児保育施設は「子どものための場所」であり、その結果として「保護者の就労支援」にも繋がっていると言えます。 ですから、保護者の方には病児保育施設を利用することは「親のために子どもを犠牲にしている」のではなく、「子どものために最適な環境を選んでいる」と考えていただきたいですね。 ネット予約サービス「あずかるこちゃん」の目指す場所 編集部: 「病児保育施設」は素晴らしい施設だということが良くわかりました……。 園田: しかし、そんな施設が十分に使われていない(=利用率が低い)ということが問題です。 理由は繰り返しになりますが、その「使いづらさ」にあります。 この問題を解決するため、ポータルサイトと同時にリリースを目指しているのが、病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」です。 編集部: こちらはどのようなサービスなのですか? 園田:現在、いくつかの病児保育施設や保護者の皆様と実証試験を行なっているところですが、基本的な仕組みは次のようなものです。 「あずかるこちゃん」の中に下記のようなマップがあり、近隣の病児保育施設について「満室」「空室あり」という状況が表示されます。 それら施設のアイコンを選ぶことで、施設の予約ができます。 「あずかるこちゃん」の施設マップ(イメージ) 編集部:もう、電話をかけなくてもいいわけですね! 園田:その通りです。 ポイントは満室の施設について「キャンセル待ち」ができ、かつ、別の施設も予約しておけることです。 もし、指定時間までにキャンセル待ちをしていた施設に空きが出た場合は、自動的に予約がその施設に移行し、もう一方の予約していた施設にはキャンセルの連絡が行われます。 そしてキャンセルした施設においても、同様に他の人のキャンセル待ちが繰り上げられます。 このようなICTを使った予約調整により、地域の病児保育施設全体で利用率が向上する仕組みになっています。 また、「あずかるこちゃん」にはLINEを使用した問診票を用意しており、病児保育施設に入室する際の書類のやり取りの負担も軽減できます。 これは施設側にとっても、入室する子どもの症状が事前にわかり、スムーズに受け入れができるメリットがあります。 園田:現在行っている実証試験でも、関係者の皆様からは「電話連絡が無くなって良かった」「24時間いつでも予約できるのはありがたい」「事前の情報入力が助かる」などの感想をいただいています。 また、ビジネスモデルは保護者の利用は無料、病児保育施設あるいは市区町村からシステム利用料をもらうというものです。 現状、病児保育施設の6〜7割が赤字であり、委託事業元である市区町村と契約することでシステムを運用していきたいと考えています。 病児保育の充実は「子育て世代に魅力ある街づくり」をどう実現していくかという行政のミッションと一致しますし、市区町村と契約ができれば、そのエリアの保護者は全施設で「あずかるこちゃん」を利用可能になるためです。 「あずかるこちゃん」が生まれた経緯 編集部: 園田さんが、この取り組みを始められたきっかけは何だったのでしょうか? 園田: 病児保育に取り組むきっかけは、私が産婦人科医として現場で直面した「産後うつ」と「親による虐待」でした。 そのような問題の解決には「生活を変えること」が必要ですが、医師(=病気を治す専門家)としての立場でできることは、本当に少ないことに気がついたのです。 その悩みの中で出会ったのが、大学院で学んだ「公衆衛生」という学問でした。 この学問は一言で言えば「社会全体の幸福度をいかに上げるか考える学問」であり、基本的に患者さんと一対一の関係になる現場の医師とは真逆の発想をもたらしてくれました。 つまり「産後うつ」や「虐待」を解決するにあたり、「個人単位」ではなく、「社会全体」を変えることに取り組むというアイデアが生まれたのです。 もう1つ、産婦人科医としてたくさんのお母さんたちに直接話を聞くことができたのですが、その時に強く感情を動かされたのが「子供が病気になるたびに仕事を休むことが増え、結果として会社を辞めることになった。 とてもつらかった……」というお話でした。 このことから「そもそも社会の構造がおかしいのではないか?」と考え、それを変えたいと思うようになったのです。 さらに子どもを持つ友人の「病児保育施設は本当に使いづらい」という一言から「病児保育施設」の存在を知り、これが解決の鍵になると考えました。 また、起業まで踏み切れたのは当時参加していたIHL(ヘルスケアリーダーシップ研究会)というNPOで、1年かけてベンチャーキャピタリストやIT企業の役員、医師、助産師、看護師、薬剤師といった素晴らしいメンバーと、この問題を検討する機会を得られたおかげです。 「あずかるこちゃん」の今後の展開は? 編集部: これからの「あずかるこちゃん」の展開は、どのようにお考えでしょうか? 園田: 私が「病児保育」における課題と考えているのは、「そもそも知られていない」および「施設の利用率が低い」、「まだまだ施設が少ない」の3つです。 最初の2つについては「ポータルサイト」と「ネット予約サービス」が解決に向けた取り組みであり、「施設が少ない」という点については、潜在的な利用者数を試算すると現在の病児保育施設数は不足していることを今年8月頃に論文としてまとめ、全国の市区町村などに訴えていく予定です。 今年の7月にリリースするポータルサイトについては全国の施設について網羅することを目指しており、予約サービスについては東京都を中心とした関東の施設がメインとなる予定で考えています。 なお、「ネット予約サービス」の導入はリモートでも可能なので、遠隔地の病児保育施設の方にもお声がけいただきたいですね。 編集部:これらの課題を解決に取り組む体制は、現状どのようなものでしょうか? 園田:現在、「あずかるこちゃん」の取り組みを実現するために、小児科医、エンジニア、病児保育専門士、プロボノ(社会貢献にボランティアで取り組む専門家。 例:デザイナー、コンサルタント、プログラマー、他)の皆さんなど、たくさんの方のご協力を頂いています。 また全国病児保育協議会や病児保育施設の方たちにご協力いただいていることが、私たちにとって最大の強みになっております。 さまざまな形で産官学の連携も進めているほか、4月からはクラウドファンディングも始めます。 これは資金調達だけが目的ではなく、「病児保育」という社会問題について世の中の人に知ってもらうための広報的な意味と、何より多くの人の力で一緒にこの課題を解決していきたいという想いが大きいです。 編集部:連携先は、どんどん広がりそうですね。 園田:いずれは保育園とも連携していきたいと考えています。 たとえば日中に保育園で子どもが熱を出したら、保護者が来なくても病児保育に行けるようにする、などです。 ここには企業も巻き込みたいと考えています。 なぜなら「病児保育の連携」が進めば、子育て中の社員が急に呼び出されたり、リモートワークの社員が子どもを看病しながら仕事をするといった事態が解決でき、企業にとってもメリットがあるからです。 このようにさまざまな関係者と連携し、子どもが安心して育つことができるネットワークを作りたいと思っています。 <取材を終えて> 「予約は電話のみ」というアナログで非効率な方法により、病児保育施設という素晴らしい資源が利用できず、多くの方が仕事を休んでいます。 結果、園田さんの言う「みんな悪くない。 それなのに、みんながしんどい」という状況を生み出しています。 保護者世代に普及しているスマホとLINEを活用した解決策は、まさに時代が求めているものではないでしょうか。 これから保育園通いを始める子どもを持つ親の1人として、同社の取り組みが一刻も早く全国に広がることを期待します。

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ICTで「病児保育」が変わる! 病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」

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CI Inc. (シーアイ・インク)では、スマホから簡単に病児保育施設の予約申し込みができるサービス『あずかるこちゃん』を開発しています。 病児保育施設は子どもが急病になってしまったときに通常の保育園に代わって看護と保育を行ってくれる施設ですが、これまで事前登録や電話予約のしづらさで子育て世代に必要なサービスなのに利用率が低いという課題を抱えていました。 『あずかるこちゃん』は、利用者と施設、両者に最適なデジタルソリューションを提供することで病児保育がより利用しやすくなる社会を目指します。 今回は『あずかるこちゃん』を運営するCI Inc. 代表の園田正樹氏にお話を伺いました。 プロフィール 園田 正樹 代表取締役社長、産婦人科専門医 新潟県糸魚川市出身。 佐賀大学医学部卒。 医師と起業家という2つの顔を持ちながら、週一24時間は産婦人科医として勤務し、その他はより良い病児保育サービスを提供するべく研究開発の日々を過ごす。 (シーアイ・インク)を2017年に設立。 「安心して産み育てる社会をつくる」をビジョンに、スマホで病児保育施設とつなげる 『あずかるこちゃん』を現在開発中。 あずかるこちゃんが取り組む「病児保育の課題」 ーーあずかるこちゃんで取り組まれている社会課題について教えてください。 園田:あずかるこちゃんでは病児保育の課題に取り組んでいます。 その施設を病児保育施設と言います。 働くお父さん、お母さんの課題として子どもの急病時の仕事の調整があります。 子どもはすぐに体調を崩します。 子どもの急病時、誰にも頼ることができないと、仕事を休まざるを得ません。 こうしたことが年になんども繰り返されることで、生産性の低下や離職のリスクを招いてしまいます。 さらに、お父さん、お母さんが子育てと仕事の両立がうまくできないストレスや離職のリスクを抱えてしまうと最終的には大切な子どもに影響が及んでしまうのです。 「産後うつ」や「虐待」、「孤育て」というような問題は、日々の小さなストレスやプレッシャーの積み重ねの上に発生しているのではないでしょうか。 我々はビジョンとして「安心して産み育てられる社会をつくる」を掲げています。 病児保育が適切に機能することは、安心して子育てする環境づくりであり、私たちのビジョンを実現させるための一歩です。 しかしながら、病児保育施設の利用率は30%程度と、とても低くうまく機能していないのが現状です。 働くお父さん、お母さんにとって子どもが病気の時でも保育をして欲しいというニーズはとても高いはずなのに、利用率は30%・・・ ここに病児保育の課題があります。 利用率が30%に留まってしまっている理由は、大きく2つあります。 それは「使いづらさ」と「認知不足」です。 そこで『あずかるこちゃん』では、まず病児保育施設の「使いづらさ」を解消するためのサービス開発に取り組んでいます。 子どもは未来、豊かに育つようにしてあげたい ーーどうして病児保育の領域に取り組もうと思われたのでしょうか。 園田:今年で、産婦人科医になって12年目を迎えます。 私はもともと、子どもが大好きで産婦人科医になりました。 その後、大学院では「社会の幸福を考える」学問である公衆衛生を学びました。 公衆衛生の中でも特に、産後うつや虐待に関心を持って研究しました。 医者は「目の前の患者さんをいかに救うか」ということを常に考えています。 しかしながら、公衆衛生学を学び視野が広がったことで、目の前の患者さんを救うためには「生活」に注目し、改善していく必要があることに気づきました。 「生活」のキーワードの1つが子育てだと思います。 そこで子育ての環境を改善して産後うつや虐待を無くせるのではないかと思ったのですが、自分では何から行えばいいかわかりませんでした。 そこで、実際に子育てされている方に話を聞くことにしました。 いろんな方に話を聞いている中で一番ショックだったのが、子どもの風邪やインフルエンザなどの軽症の病気が原因で仕事を休むことになってしまい、上司から配置換えを指示されて、やりがいと収入が減り、仕事を辞めてしまったという声があったことです。 子どもが風邪をひくことは当たり前のことなのに、それで親がキャリアを諦めなければならないのは、少しおかしいのではないかと思いました。 また、大学院の同期からも「病児保育がすごく使いづらくて困る」という話を聞くことがありました。 その時に初めて「病児保育」という言葉に出会いました。 病児保育について調べると、子どもが急に病気になった時に保育園では預かってもらえないのですが、そうしたお子さんを預かってくれる専用の施設が全国にたくさんあることが分かったんです。 「めっちゃいいじゃん!」と素直に思いました。 同時に、産婦人科で子どもや女性のことに関わっている身なのにどうして知らなかったんだろうと思い、「病児保育」についてさらに調べていくと、あまり利用されていないことがわかりました。 どうしてこんなに良いものが使われないのかと思って、さらに深掘りしていくと「使いづらさ」と「認知不足」の課題があると分かったんです。 その時に「使いづらさ」であれば、テクノロジーを活用して利用者と施設をもっと身近にする仕組みを作ることで、解決できるのではないかと思いました。 これが、私が病児保育の課題に取り組んだきっかけでした。 ーー子どもが好きということですが、親の課題解決にアプローチしているのはどうしてですか。 園田:子どもは未来だし、何にでもなれる存在だと思うんですね。 別の言葉で言えば、育った環境によって、その子どもの将来はいい方にも悪い方にも振れてしまう。 僕はもの凄く田舎の生まれで、全校生徒9人の学校で育ちました。 僕が医者になることは正直ありえないことです。 同級生は誰も大学に行っていません。 僕は少しだけ成長が早かったおかげか、成績が良く、恩師の後押しもあって運良く進学校に進むことができました。 そして高校で初めて、周りの人達が、東大に行くとか医学部に行くのが普通と捉えている環境に入ったのです。 そこで出会った、恩師や周りの環境が僕の人生を大きく変えてくれました。 やはり子どもにとっては、周りの環境がとても大事だと思うんです。 まずは親を幸せにしてあげることが、子どもの幸せに繋がると思います。 ビジネスは全てのステークホルダーを見よ ーー育った環境によって子どもが大きく左右されてしまうという原体験をお持ちなんですね。 あずかるこちゃんはどのようなサービスなのでしょうか。 園田:あずかるこちゃんでは、病児保育の利用に関わる二つの課題に取り組んでいます。 それは利用者の課題と施設の課題です。 利用者の課題として、まず、予約できるまでのハードルが高いことが挙げられます。 少し想像してみてください。 共働きの家庭で、夜にお子さんが熱を出した。 保育園はきっと預かってくれないし、どちらかが仕事を休んで看病しなければいけない。 でも、2人とも明日はすごく大事な会議があり、仕事は休めそうにない。 そんな時に、病児保育施設を知っていればすぐにお願いしたいと思うはずです。 しかしながら、施設をすぐに予約できるかというと、実はそうではないのです。 まず事前に登録をしなければいけません。 全ての施設に当てはまることではありませんが、市区町村や施設に事前登録をしないと病児保育施設を利用することができないのです。 また、その事前登録も紙の書類でFAXや郵送、直接施設または自治体に持っていかなければならないところもあります。 例えば、ある区だと11施設程あるのですが、3つの施設に予約申し込みをしたい思った時に、そのすべてに事前登録書類を提出しなければいけなかったりと。 とにかく予約までのハードルが高いです。 実際に予約をする時も、9割以上の施設は電話予約です。 家に帰ってきて、子どもが熱を出して夜に電話をかけようと思っても、施設の営業時間外だった場合、予約の申込ができません。 翌日の朝7時ごろから電話受付が始まりますが、そこで一斉に電話がかかってくるので、つながりにくい状況です。 そのような体験を繰り返してしまうと、予約すること自体が苦痛になってしまい、「どうせ使えない」というイメージがついてしまいます。 現状の事前登録や電話予約をデジタル化してお父さん、お母さんがより病児保育施設を利用しやすくなるようにする。 これがあずかるこちゃんで解決する利用者側の課題です。 実は施設利用に必要な煩雑な紙書類をデジタル化して、電話予約ではなくスマホから予約できるようにすることで、病児保育の課題が解決できると思って、以前サービスを始めようと思ったのですが、上手く機能しませんでした。 施設側に受け入れられないサービスを作ってしまったんですよね。 利用者の課題はいろんな方にヒアリングをしていたので深く理解していたのですが、サービスを導入してくれる施設側のことを全然知らなかったということに気付いたんです。 そこで施設側は何に困っているのか、どういうサービスを求めているのか、しっかりと理解する必要があると思ってヒアリングに行きました。 すると、施設は電話でのコミュニケーションを大事にしていることがわかりました。 電話を利用することで、子どもがどのような状態で、本当に預かって大丈夫かを判断するのに丁寧に問診をしています。 問診のルールも施設ごとに全く違うようで、それをシステムにするにはかなり難渋すると思いました。 僕らは初め、利用者側だけの課題を見て、全ての書類のデジタル化や、電話をなくして予約から予約確定までシステムを導入することで、利用者に喜んでもらえると思ってシステムを開発していました。 でも、施設側はそれを望んでいなかったのです。 なので、今やろうとしてることは、かなりシンプルです。 あずかるこちゃんは、スマホで予約申し込みすることを可能にするだけで確定はしません。 確定まですると、施設側で「どうしてこの人を確定にしたの」となってしまうからです。 予約申し込みさえできていれば、施設側は利用申込一覧を手にすることができます。 すると、これまで営業中に全て電話で確認していたことを、日中の保育の時間が終わった後に、施設側から保護者に向けて電話で確認できます。 保護者は電話が繋がらない苦痛がなくなって、電話が来れば使える可能性が極めて高いこと。 そうでなければキャンセル待ちであることや、利用できないことがわかります。 現状、利用できなかった人がどのような体験をしてるかと言うと、朝8時半までに連絡が来なければ「利用できないと考えてください」という形になっているところもあります。 それでは働いてるお父さん、お母さんにとって辛いと思うので、そのような体験を少しずつ変えていきたいと思います。 施設側もシステムを導入することに対して不安を抱えているので、現状のオペレーションを大きく変えてしまわないようにしながら、少しずつシステムを導入していくようにしています。 僕らは最初、システム上で全てを完結できるものを作ってしまったのですが、今はあえて機能を少なくして、そこから積み上げていくことを行っています。 その方が現場にとっては最適な流れだと気付いたからです。 また、施設へのヒアリングの結果、他にも見えてきた課題があります。 それは、病児保育がそもそも知られていないことでした。 弊社で病児保育について、子どもを持っているお母さん300人を対象に、全国調査を行いました。 実際に子育て中であり、利用の可能性が高い保護者の9割近い方が一度も使ったことがないという結果が出てきたのです。 「認知不足」が「使いづらさ」とは別のところで課題となっているとわかりました。 この調査でわかったことは、ネガティブなことばかりではありません。 ポジティブなデータもあって、一度しっかりと利用できた人の多くがリピーターになっていたんです。 これは病児保育施設の利用体験が素晴らしいという証だと思います。 しかし、現状、限られたお母さんたちが何度も利用して利用数があるという状態なので、認知不足は絶対解決しなければいけないと思っています。 想いだけでは、社会を変えることはできない ーーカスタマーとクライアントがいるビジネスモデルでは、片方のニーズや仕様を満たすだけでは上手くいかない失敗がよくあると思います。 どちらのニーズやインサイトも満たすようなソリューションの最適化が重要ですよね。 運営していて大変だったことや嬉しかったことにはどのようなことがありますか。 園田:大変だったことは、僕が医療者なのでビジネスのことがわからないし、そもそも新規事業を創るということが全くわからなかったことです。 最初は完全に手探りで、学びの時間がすごく必要でした。 先ほど申し上げたように、以前ユーザーの課題に合わせたシステムを一度構築して、実証実験を行いました。 最初に実証実験を行った施設でいい形でハマって「思った通り、これならいける!」と思いました。 しかし、これが後に「1つの施設にハマってしまっただけ」だと気付きました。 実証実験に協力していただいた施設は、新設の施設で、既存のオペレーションが無く、すべてをデジタル化しても上手くいってしまったんです。 逆にこれまで長く運営されてきた施設には、売れないものを作ってしまいました。 なので、かなりお金も時間も投入して作り上げた、理想の形を実現したシステムを全て捨てるという意思決定をしなければいけない時がありました。 その時に想いだけの素人集団では、絶対に社会を変えることはできないと理解しました。 その時の意思決定は凄く辛かったですね。 嬉しかったことは、利用者側の実証実験では凄くポジティブなフィードバックを頂けたことです。 今まで電話予約などの体験をした人があずかるこちゃんを利用すると「めっちゃいい!」と言ってくれたので、僕らがユーザーサイドを見てやっていたことは、決して間違っていなかったとわかって、凄く嬉しかったですね。 ーー最後に今後の展望とメッセージをお願いします。 園田:『あずかるこちゃん』の目標は、病児保育の課題を全て解決することです。 現在はネット予約だけですが、それで終わることなく、保育記録や保護者と施設のコミュニケーションなどを解決できるように展開していきたいと思っています。 その解決策はビジネスサイドだけでなく、行政サイドやアカデミアなどの大学サイドも巻き込んで、大きなムーブメントを起こしていきたいと思います。 産官学の連携で病児保育という素晴らしい社会資源を多くの人に届けていきたいですね。 会社としては、病児保育だけでなく、子育て全てに関わる課題を解決できるようにしていきたいです。 この記事を読んでいる方へ経営者として私が伝えられることは、経営資源としてよく「ヒト・モノ・カネ」と言われると思いますが、圧倒的に大事なのは「ヒト」だと思っています。 僕の会社の名前は「Connected Industries」です。 この名前は、イノベーションを起こすには様々な分野の知見を合わせることが必要だという信念の現れです。 私の取り組んでいる事業は、ビジネスの知見であったり、エンジニアリングであったり、保育のような領域の専門家の意見であったり、あらゆる知見を合わせていかないと成功しないと思います。 それらを一人で全部できるようにしていたら、「いつできるようになるの?」となってしまいます。 1人ですべて行うのではなく、強いチームを作ることが大切です。 これから起業などに挑戦しようと思われる方は、想いは凄く強いと思います。 ただ、それが上手くいくかどうかは、強いチームを作ることができるかにかかっていると思います。 一人で頑張らずに、声をあげて仲間を増やして下さい。 最初は一人で旗を立てる必要があるかもしれませんが、身近な人を巻き込んで、そのチームで社会を変えていく。 この順番をぜひ意識して、動いていただければいいと思います。

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病児保育を格段に使いやすくする「あずかるこちゃん」が2020年4月5日(日)よりサービス開始

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病児保育プラットフォームの構築を手掛けるCI Inc. (シーアイ・インク)代表取締役社長の園田正樹氏に、病児保育施設の利用を促進するために開発中の、ネット予約サービス「あずかるこちゃん」の利便性を高めるための工夫と、子育て支援にかける思いを伺いました。 利便性を高める病児保育施設ネット予約サービス「あずかるこちゃん」 使いやすく現場に寄り添うことを目指して開発された、病児保育施設ネット予約サービス「あずかるこちゃん」はビジネスモデル特許を取得しました。 近い将来には優先順位をつけて複数の施設を予約できるのが特長で、利用者と施設の部屋単位でのマッチングを可能にします。 子どもの病状は急に回復することが多いため、当日のキャンセル率がとても高くなります。 エリアで予約を管理することにより、キャンセル待ちの利用者を希望する空き近隣施設へ自動で振り分けることができます。 また、隔離児童の受け入れも病状によって同様の子どもがいる近隣施設に振り分けられるので、施設稼働率を上げることにも貢献できます。 電話予約はスマホ予約へ、LINEの活用で簡単に予約キャンセルが可能になり、利用者の負担を減らします。 ポータルサイトでは施設の情報を見える化し、わかりやすい情報を入手可能にします。 今後あずかるこちゃんは、病児保育を使いたい人が使えるように、「24時間オンライン予約」をはじめとする便利な機能をリリースし、都内から順次サービスを提供していきます。 今後は「事前登録手続きのデジタル化」「オンライン問診」「キャンセル待ちの自動繰り上げ」といったラインナップを揃え、「当日の朝には自動的に予約が完了している」世界の実現に向けて開発を進めていきます。 子育て支援すべてに関わっていきたい 病児保育施設の多くは市区町村からの委託事業です。 自治体によって求められる手続きが異なります。 利用できる年齢も違えば、料金もさまざまです。 「あずかるこちゃん」を地域単位で運用するためには、手続きを統一していかなければなりません。 包括的な改善のためには、行政、施設と一丸となって進めることが重要になります。 クラウドファンディングへの反響は、この事業の取り組みにたくさんの方々が賛同してくれているのだと感じ、事業推進の大きな力になっています。 病児保育の予約に特化してプラットフォーム事業をスタートしましたが、業務を保育事業全般へつなげ、将来的には子育て支援すべてに関わっていきたいと意欲を燃やしています。 未来ある子どもたちが健やかに育ち、子育て世代が子どもを安心して産み育てられる社会の実現に向けて尽力していきたいと園田さんは語ります。

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